2021年2月28日放送 川村妙慶さん(第2219回)
- 会場
- 原地区センター(沼津市)
- 講師
- 僧侶・アナウンサー 川村妙慶
講師紹介
福岡県生まれ。真宗大谷派僧侶。
関西を中心にラジオ番組のパーソナリティーなどをつとめる。
ホームページで日替わり法話を毎日更新し、
メールでの悩み相談にも応じている。
番組で紹介した本
「あした元気になあれ 寝る前5分の、ホッとする法話」著:川村妙慶(海竜社)第2219回「善悪をこえて生きる」
みなさんにとって「善人」とはどんな人ですか?
やさしくて明るい人、親切な人、ルールを守る人というイメージだと思います。
「悪人」というとその反対で意地悪な人、ルールを守らず迷惑をかける人が浮かぶと思います。
2020年は新型コロナウイルス問題で全世界が不安に陥りました。
「密」を避けるための自粛生活。その中で「自粛警察」という言葉が生まれました。
その根底はどこにあるのでしょうか?
親鸞上人は「歎異抄」で
『善人はなおもって往生を遂ぐいわんや悪人をや』といっています。
日頃からまじめに生きている人は極楽往生が約束されている。
まして悪人なら尚更だということです。普通の考え方とは真逆の言葉です。
さらに『さるべき業縁のもよおせば いかなるふるまいもすべし』
人は状況次第でどんな行いをするかわからない。
つまり自らの行動を自覚すること、また他者への思いやりの大切さを伝えています。
外国での話です。資産家の父親が2人の息子に財産を分け与えました。
兄はそれを貯蓄して毎日しっかりと働きました。
一方、弟は豪遊を繰り返し数年で使い果たしました。
そして自らの過ちに気づき実家に戻って父親に
「一から出直したいのでこの家で私を雇って下さい。」と頭を下げました。
父は許しましたが、兄は弟を許すことができません。
自分は正しい、自我に固執するあまり弟を責めてしまいました。
実は親鸞上人は自分の正義を譲れない人を「善人」といったのです。
人は誰でも善人と悪人の両面を持ち合わせています。
自らの振る舞いを自覚して「悪かった」と悔い改めることができた人のことを
親鸞聖人は「悪人」といったのです。
このところインターネットでの誹謗中傷も後を絶ちません。
厳しく注意することは悪いことではありません。
でも注意するだけではなく立ち直れるきっかけを共に作っていくことが大切です。
涙を知っている微笑は本当に美しいです。
自分も自ら傷ついたからこそ、ともに手を携えてやり直しができるのです。
「お互い様だから...」という言葉があると楽になります。
善・悪を乗り越えた先に深みのある人間関係が築けるのではないでしょうか。