2021年4月25日放送 田中ウルヴェ京さん(第2227回)
- 会場
- 裾野市生涯学習センター(裾野市)
- 講師
- スポーツ心理学者・博士 田中ウルヴェ京
講師紹介
ソウル五輪シンクロ・デュエット銅メダリスト。米国大学院修士修了(スポーツ心理学)。慶應大学にて博士号取得(システムデザイン・マネジメント学)。慶應義塾大学特任准教授。トップアスリートや経営者など幅広く心理コンサルティングに携わる。一男一女の母。
第2227回「やる気のカタチ」
『やる気』は心理学では「動機づけ」、
英語だと「モティベーション」と言われたりします。
その人本人が目標に向かう力が『やる気』です。
大事なのはその人が目標を持っているということ。
その目標を達成すためのエネルギーがやる気です。
やる気には種類があります。例えばジョギングを始めるタイミングだとします。
「走ることが好き」=走ることが目的で自分が走りたいと決めて走る。
これはよく「やる気がある」と言われます。
また実は走ることが目的ではなく、
走るという手段を使って「痩せる」という目標を叶えたい、これもやる気です。
その他にも走るグループの先生やチームメイトが好きということ、
他の人に言われて仕方なく毎日続けているということもやる気です。
オリンピックでメダルも取っている女性アスリートの実例です。
彼女は、最近やる気が出ないのは、
競技が好きでなくなってしまったことが原因なのかもしれないと思っていました。
そんな気持ちに気づいてから、改めて頑張らなくてはいけないと思いました。
しかし、どうしても空回りしてしまう...。
競技を好きでなければいけないと思うほど、ますます競技が嫌いになっていったそうです。
私は彼女に尋ねました。
「けさ、練習をしてからこの部屋に来ませんでしたか?」
すると彼女はキョトンとして
「もちろんそうです。一日でも休んだら体が整わないので。」
その時、彼女も気づいたようです。
自分は競技を手段として体を鍛えている感覚が好きだということに。
最後に彼女は「やる気が出ました!」と言って帰りました。
でもその種類は変わっていました。
やる気は本人次第です。
他人がスイッチを入れてあげられるものではありません。
でもだからこそ、子どもたちには目標に向かう力を感覚として身につけて欲しいと思います。
まずは失敗受容力です。何かを始めた子どもは成功も失敗も経験します。
特に失敗は「あんなに頑張っていたのに残念。」と親としては思います。
それももちろんですが
「残念な経験ができたね。あなたが挑戦しなければ経験できなかったことよね。」
と成功も失敗もどちらからでも学ぶことができると伝えて欲しいと思います。
そして『ありがとう』という言葉です。
「子育ては親育て」という言葉が30代の私にはしっくりきていました。
母親1年生だからできないことの方が多い...。
自分も失敗や行動から学ぼうと思っていました。
子どもを褒めるとき「偉いね」だと上から目線になってしまいます。
「ママ助かった、ありがとう。」と、この『ありがとう』という言葉を使うことで
「何にでも挑戦していいんだよ。」というメッセージを伝えて欲しいと思います。