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過去の放送

過去の放送

2021年5月30日放送 小菅正夫さん(第2232回)

会場
テレビ静岡(静岡市)
講師
札幌市円山動物園参与 小菅正夫

講師紹介

1948年北海道生まれ。
北海道大学獣医学部卒業後、旭川市旭山動物園に獣医師として勤務。
飼育係長、副園長を経て1995年園長に就任。
現在は札幌市環境局参与円山動物園担当。


ポイント第2232回「心でつなぐ オランウータンの命」

札幌市の円山動物園でオランウータンの健康管理に奔走したトレーナーと、

雌のオランウータン「レンボー」の話です。

彼が担当になって間もない頃、レンボーの子どもが生後わずか10ヵ月で死んでしまいました。

原因は腸ねん転。苦しんでいるのがわかっていたのにトレーナーは何もできませんでした。

動物園で暮らすことは決してオランウータンが望んだことではありません。

動物の命を預かる者として「健康管理を徹底しよう」と彼は決意しました。


ちょうどその頃、ハズバンダリートレーニング(受信動作訓練)が様々な動物園で行われ始めていました。

彼は、このトレーニングを始めるにあたって心に決めたことがあったそうです。

まずオランウータンが動物園で生きることを尊重して、すべてをレンボー中心で行っていくこと。

そしてレンボーが嫌がることは絶対にしない。

トレーニング時間は10分以内で、必ず褒めて終わるというルールです。


トレーニングは動作でコミュニケーションをとります。

例えば口を開けるしぐさを見せて、レンボーの口が少しでも動いたとき

クリッカーという道具でカチッと音を出します。

音と動作を関連付けていきます。そして褒めてご褒美をあげます。

これを繰り返しているうちにレンボーは何を求められているのかがわかるようになります。

口を開けて歯周病のチェック、コップに唾を出してもらって口の中の衛生管理、

そして尿検査、これらを覚えるのにかかった期間はわずか2週間でした。

最初のきっかけがうまくいくとレンボーが先を読んでやってくれるのです。


そしてそろそろ次の子どもの準備に入ろうという時、

トレーナーは胎児の成長も記録したいと考えました。

定期的にエコー検査を実施するためにトレーニングをし、

レンボーもその意図を理解して協力してくれたおかげで、

胎児になる前の「胎芽」状態も映すことができました。

こうした胎児の成長が記録できたのは訓練のおかげでした。

レンボーが赤ちゃんを出産した日、

トレーナーの姿を確認すると赤ちゃんを見せに来てくれたそうです。

さらにすごいことに、生後8日目に赤ちゃんの身体測定もできました。

これもレンボーが協力してくれたからです。


円山動物園ではいま、レンボーだけでなく

すべてのオランウータンの健康管理ができるようになりました。

担当のトレーナーは最初、

「自分がレンボーをトレーニングするんだ、教育するんだ。」

と思っていたそうです。

「でもいま振り返ると、レンボーの指示通りにやったらトレーニングができた。

だから自分を訓練していたのはレンボーだった。レンボーが自分をトレーナーにしてくれたんだ。」

と話していました。

こういう気持ちで動物と接することが本当の意味で動物福祉の向上につながるのではないでしょうか。

お互いを心から認め合って関係性を作っていくことが必要だと思います。

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