2021年7月18日放送 武田数宏さん(第2239回)
- 会場
- 雄踏文化センター(浜松市)
- 講師
- 伊勢青少年研修センター所長 武田数宏
講師紹介
1958年福島県生まれ。大学卒業後、修養団へ。2007年から伊勢青少年研修センター所長を務める。企業や学校の講演会では、命・家族・生き方など、当たり前の中にある大切な本質を伝えている。
番組で紹介した本
「心をみがき幸せに生きる70のメッセージ 当たり前にありがとう」著:武田数宏(きれい・ねっと)
「いのちのまつり」「いのちのまつり みらいへ」
作:草場一壽 絵:平安座資尚(サンマーク出版)
第2239回「当たり前に ありがとう」
何気ない毎日の中にはたくさんの学びがあったり、気づきがあったりします。
小学5年生の進(すすむ)くんはある朝、これまでずっと計画していたことを実行に移しました。
お母さんは朝ごはんをつくっています。
進くんはそっと近づいて後ろからお母さんに抱きつきます。
「お母さん大好き。」何度も繰り返します。
びっくりしたお母さんがが「何かお願いでもあるの?」と聞くと
「手紙を書いたから読んで。」と進くん。
その後、忙しく家事に追われていたお母さん。
手紙のことを思い出して進くんの部屋に行くと、封筒に入っていたのはなんと「請求書」でした。
『①犬の散歩代100円、
②弟の面倒を見たときの遊びの代金100円、
③皿洗いのお手伝い100円、
④庭の落ち葉拾い100円、
⑤留守番代100円、合計500円。』
この請求書のおかげで進くんは500円を手にしました。
すると翌朝、お母さんから「学校に行く前に手紙を読んでね。」と言われます。
お母さんからの手紙も同じく「請求書」でした。
『①赤ちゃんの頃飲んだおっぱいの代金 ただ、
②病気をした時の看病・お薬代 ただ、
③鉛筆・ノート・学用品代 ただ、
④洋服代 ただ、
⑤生まれてからこれまでのお世話代 みんなただ。
進さまへ、お母さんより。』
この請求書を見て進くんは、お母さんの深い愛情を知りました。
これまで育ててもらったこと、守ってもらっていたこと、大切なことに気づきました。
その日、進くんの「行ってきます。」という声はいつもより2倍も3倍も大きかったそうです。
私の知人のエピソードです。
彼は仏壇、仏具の製造、販売を手掛ける会社を経営していました。
日々の仕事に悩みもありましたが
先代の社長、お父様は既に他界されていて相談することもできませんでした。
そんななか友人から「お父さん宛に葉書を書いたらいいよ。」とアドバイスをもらいました。
「もうこの世にはいないけれど...。」と思いながらも葉書を書き実家の住所で父親宛に送りました。
しばらくして実家に帰るとお母さんが
「はじめはびっくりしたけど、代わりに私が仏壇の前で読んでお父さんに伝えておいたから。」
何年か続けると葉書はお母さんの生きがいになりました。
この出来事をきっかけに仏壇に置く「天国郵便局行きポスト」という商品ができました。
しばらくして、ポストを購入した女性がお礼にと仏具店に訪れました。
交通事故でご主人を亡くした女性、
小学6年の娘と中学3年の息子、2人の子どもたちの心の支えになればと思いポストを買ったそうです。
子どもたちが葉書を書いて毎日投函したらお父さんの存在が家に戻ってきたといいます。
仏壇の前で朝ポストに葉書を入れる時「お父さん、おはよう。」、
学校に出かける時「お父さん、行ってきます。」、
食事の時はお父さんの思い出話をみんなでできるようになりました。
当たり前なこと、例えそれが小さなものでも心から感謝していけば、
素敵な生き方につながると思います。