2021年9月 5日放送 親野智可等さん(第2246回)
- 会場
- 市民ホールおかべ(藤枝市)
- 講師
- 教育評論家 親野智可等
講師紹介
1958年静岡県生まれ。公立小学校で23年間教師を務める。
教育現場で親が子どもに与える影響の大きさを痛感。
教師としての経験と知識を子育てに役立ててもらいたいと
メールマガジン「親力で決まる子供の将来」を発刊し、評判となる。
第2246回「「好き」を学びに」
以前、講演をしたときにスタッフの女性に聞いた話です。
小学3年生になる息子さんが、プロ野球が大好きで
関連することはどんどん覚えてしまうそうです。
そんな姿を見て彼女はあるアイデアを思いつきました。
「野球のことすごく詳しいね。漢字で書いた野球選手の名前って読める?」
「うん、読める、読める。」
「じゃあ、『原辰徳』は?」
「『はらたつのり』じゃん。」
「お~、すご~い。」
「『菅野智之』は読めないでしょ?」
「『すがのともゆき』。ピッチャーだよ。この前もテレビのテロップで見た。」
選手10人くらいの名前を出してみるとそのうち8人は読めました。
「難しい漢字も読めてすごい!漢字が得意なんだね。」とほめたらとても喜んだそうです。
気分がよくなったところで「書けるようになるとかっこいいね。」とアドバイスすると
大いに乗ってきて、毎日1人ずつ書き方を覚えることになりました。
しばらくすると
「ジャイアンツが好きだから選手全員の名前を漢字で書けるようになりたい。」と。
調べてみると選手だけで70人近くいることがわかりました。
パソコンで一覧表を作ってあげたら冷蔵庫に貼ってときどき見ていました。
いまも毎日1人ずつ覚えていて、既に40人くらい書けるようになったそうです。
選手1人当たり平均漢字4文字として単純計算すると70人で280字。
重複している漢字やすでに習った字を引いたとしても250字くらいは新しく覚える計算です。
学習指導要領では小学校6年間で習う漢字を1026文字と定めていて、
この4分の1に近い漢字を覚えられることになります。
子どもの好きなことに関係づけて本人のやる気を上手に引き出しながら進めている
お母さんの親力もお見事だと思います。
なお、この発展としては、次のようなことも考えられます。
・他のチームの選手の漢字も覚える(国語)
・名前をローマ字で書けるようにする(国語)
・選手の出身地を調べて地図に記入する(社会)
・打率を計算する(算数)
漢字の勉強も「書き取りを頑張って覚えなさい。」と言われると途端に嫌になってしまいます。
でも息子さんが好きな野球をきっかけにして、
それに関連付けて親子で楽しみながら学ぶことができました。
これが「楽勉」です。
生活や遊びの中に楽しく、楽に学びを取り入れていくと
「好きなことをきっかけに」学力を上げることができます。
まず子どもたちの熱中体験を心から応援すること。
そして子どもを中心に、親は応援団に徹することが成功の秘訣です。