2021年9月12日放送 藤原和博さん(第2247回)
- 会場
- テレビ静岡(静岡市)
- 講師
- 教育改革実践家 藤原和博
講師紹介
1955年生まれ。
1978年東京大学経済学部卒業後、リクルート入社。
2003年より5年間、東京都内では義務教育初の
民間人として、和田中学校校長に。
著書「坂の上の坂」は12万部を超えるベストセラー。
番組で紹介した本
「10年後、君に仕事はあるのか?」著:藤原和博(筑摩書房)第2247回「情報編集力を鍛えよう!」
この先10年、最大の社会変化はAI、ロボット化です。
この10年で半分の仕事がなくなるともいわれています。
具体的に考えてみたいと思います。
ここ20年間に姿を消した仕事、それは駅の改札の仕事です。
自動改札の普及がその理由です。
駅や鉄道の仕事で次になくなるおそれがあるのはどの仕事でしょうか?
運転士も候補にあがると思います。
東京の新交通システム「ゆりかもめ」は開業当初から運転士はいません。
では運転士と同じく列車に乗っている車掌はどうでしょう?
この先なくなるおそれがある仕事、またなくなりにくい仕事、
これを見極めるには、必要な能力の違いを確認しておく必要があります。
まずは「情報処理力」です。
これは正解がはっきりしているもの、そしてその正解を早く、正確に答える力。
「基礎学力」に近い力です。
これに対し「情報編集力」は正解がひとつではない問題に対して様々な仮説を立てていきます。
その中から自分が納得できる、
また自分以外の人からも納得を得られる結論を導き出す創造的な力です。
言ってみれば、情報処理力は「頭の回転の速さ」、情報編集力は「頭の柔らかさ」です。
運転士と車掌の仕事をこれに当てはめてみると、
運転士の仕事は複雑なことをやっているように見えますがひとつひとつに正解があります。
作業としては正解の束ということになります。これは「情報処理力」型の仕事です。
一方、車掌の仕事は予測不能なこと、想定外なことが起こったり、
二律背反の中で難しい判断をしたりしなければならないことも多いと思います。
例えば走行中の列車の中で急病人が出た場合、限られた情報の中でとっさに判断を下し、
途中の駅で列車を停めて患者を搬送することもあります。
AIやロボットは詳細なデータがなければこうした判断ができないし、
また列車を停止させたことについて責任を負うこともできません。
基礎的人間力がベースにあって情報処理力と情報編集力が身に付きます。
それはみなさんがどんな体験をしたか、またどんな環境で育ったか?
家庭教育で育まれたものが基礎になります。
情報処理力を伸ばすのは「勉強」です。いろいろな知識を頭に入れること。
そろばんや速読などが頭の回転を速くすることにつながります。
そして情報編集力、頭を柔らかくするのに役立つのは「遊び」です。
遊びの中には無限に想定外のことが混じっています。
例えば遊びに出かけた時に雨が降ってきてしまった。
このときどう遊びを変えるのか?
5年生の同級生と遊ぶのに2年生の弟が着いてきてしまった...
そのときにどうルールを変えるのか?
10歳くらいまでにどれくらい豊かに遊んだかが情報編集力の基盤になると思っています。
これから先の時代で求められるのは情報編集力、そして基礎的人間力になります。