2021年9月26日放送 藤原和博さん(第2249回)
- 会場
- テレビ静岡(静岡市)
- 講師
- 教育改革実践家 藤原和博
講師紹介
1955年生まれ。
1978年東京大学経済学部卒業後、リクルート入社。
2003年より5年間、東京都内では義務教育初の
民間人として、和田中学校校長に。
著書「坂の上の坂」は12万部を超えるベストセラー。
番組で紹介した本
「45歳の教科書 -モードチェンジのすすめ」著:藤原和博(筑摩書房)第2249回「人生100年時代の人生観」
定年退職するまでに働く時間はおよそ8万時間といわれています。
現在日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳。
60歳から80歳過ぎまでの余暇時間を計算するとこれがぴったり8万時間になります。
いまの日本人は「人生を2度生きることができる」といっても過言ではありません。
人生100年時代を生き抜くためにまず、これまでの人生の「エネルギーカーブ」を描いてみます。
失敗や挫折、病気など人生の山と谷を振り返ります。
私は昭和30年生まれ、「巨人、大鵬、卵焼き」といわれていた時代、まずは野球に熱中しました。
小学校5~6年の時にメキシコオリンピックでサッカーが銅メダル。
私もサッカー少年に変わりました。
ところが進学した中学校にサッカー部がなかったのです。
これは本当に落ち込みました。
一転して高校時代はバンドのボーカルとしてモテた時代でした。
これは当然盛り上がります。
それが大学に入って一気に落ち込みました。典型的な「五月病」。
目標を失って1ヵ月くらい「ひきこもり」に近い状況でした。
その後リクルートに就職してエネルギーカーブは上向きになります。
ところが30歳の時にメニエール病という病気に罹ってしまいました。
これもつらい時期でした。
このように人生には山と谷があります。
山があるから谷がある、谷がなければ山もないのです。
谷の深さが深ければ深いほど後半の人生に反転して出てきます。
つまり人生の大きな武器になるということです。
人は失敗談とか、挫折した話、そしてそこからどう奮起したのか?
あるいは病気をどう克服したのか?という話が好きです。
そういうことをおもしろおかしく話せる人に、人は寄ってきます。
それがみなさんの魅力であり、磁力になるのです。
逆に、いい時の自慢話しかしない人は友だちがどんどん離れていってしまいます。
およそ100年前、1900年代の明治後期の日本人の寿命は50歳ともいわれていました。
当時は「坂の上の雲型」の人生観。
人生というひとつの山があってその上に雲がある。
雲は理想とかビジョンを表していました。
だからこそ20代、30代で一生懸命に仕事して40代、50代は余生だったのかもしれません。
寿命が明治期の倍の100歳になりつつあるいま、
「ひと山主義」の人生観では山頂を越えた余生が50年あることになります。
人生100年時代に対応するには、
「ひと山主義」ではなく山を連ねていく「連峰型」の人生観が必要です。
しかし定年間際になったときに突然次の山が表れて自分を救ってくれるわけではありません。
事前に裾野をつくる準備が必要です。
連峰型の山並みはコミュニティーです。
例えば、子どものPTA活動とか、中断していた習い事をもう一度やってみるとか、
あるいは小学生の頃鉄道ファンだったからさらに掘り下げてみようとか...そういうことでいいと思います。
おそらくひとつのコミュニティーに自分の居場所ができるまでに5年~10年かかると思います。
事前の準備が整っていれば60代からの8万時間といわれる余暇の時間も充実して過ごせるはずです。