2021年10月17日放送 尾木直樹さん(第2252回)
- 会場
- 裾野市民文化センター(裾野市)
- 講師
- 教育評論家 尾木直樹
講師紹介
1947年滋賀県生まれ。早稲田大学卒業後、
教師として22年間子ども主役の教育を実践。
その後大学教員に転身し22年教壇に。現在は
法政大学名誉教授、臨床教育研究所「虹」所長。
第2252回「コロナ禍のこころと身体」
コロナ禍で子どもたちのこころと身体に大きな変化が起きています。
学校の休校や外出の自粛、子どもたちが家の中に籠らざるを得なくなりました。
その中で現れた身体の変化、まずひとつは視力の低下です。
裸眼視力が1.0未満の近視の割合が
小学生で37%、中学生で58%といずれも過去最多となりました。
自粛生活でスマートフォンやゲーム、あるいは読書と、
眼を使うことが多くなったことが原因とみられています。
また外に出て日光を浴びていないことも要因のひとつとみられます。
視力と日光は実は関係が深いとされていて、
台湾の学校では日光を浴びることができるように時間割が組まれています。
肥満や痩身(やせすぎ)の子どもも増えています。
標準体重より20%以上重い「肥満」の割合は小・中・高、すべての学校で増えていて、
特に小学6年生は過去最多となっています。
やせすぎの子どもも全ての学年で増えています。
肥満は家に籠る生活で運動不足や間食が増えたことなどが原因だと考えやすいのですが、
やせてしまう子どもは背景が複雑です。
家にいても食事の用意がない、作ってもらえないなどの社会問題も垣間見られます。
最新のデータで「子ども食堂」の数は全国5000カ所以上に上ります。
子ども食堂はみんなで食事をとりながら
地域の食文化を大事にしようという位置づけに変わっているものの、
2018年の調査で17歳以下の子どもの貧困率が7人に1人の割合と、
国際的にみても高い日本の現状があります。
子どもたちのこころの変化はどうでしょうか?
コロナ禍でストレスを感じている子どもは実に7割を超えています。
これは健全な次世代を育成するための医療と研究を行う機関
「国立成育医療センター」が2020年4月から定期的に調査したものです。
不安を抱える子どもたちに寄り添って絆を深めていくことが大切です。
尾木ママからのアドバイスとしては、家庭で子どもの話をしっかり聴くこと。
「きく」は3通りあります。
「聞く」は、音や声が耳に入ってくること。
また「訊く」は尋ねる、問うことを意味しています。
そして「聴く」は積極的に耳を傾けることです。文字にも心が含まれています。
子どもの話をこころで受け止めてください。
そして子どもと同じ高さまで目線を下げて相槌を打ってあげてください。
聴き方にもコツがあります。大切なのは子どもの話の語尾を繰り返すこと。
例えば、子どもが「きょう学校でほめられたよ。」と話した時は、
「そう、ほめられたんだ!」とオウム返しです。
声と動作を交えて相槌を打つことで信頼感はさらに深まります。
コロナ禍は、私たち大人を含めてこれまで誰も経験したことがありません。
子どもたちもみんな苦しみに耐えています。我慢しています。
それだけで十分偉いと思いませんか?
相手をリスペクトしてあげて欲しいのです。
こころで受け止めて共感しながら話を聴く、
親子の絆を深めてコロナ禍を乗り切りたいと思います。