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過去の放送

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2022年3月27日放送 ジェフ・バーグランドさん(第2273回)

会場
テレビ静岡(静岡市)
講師
京都外国語大学教授 ジェフ・バーグランド

講師紹介

1949年米国生まれ。高校教師歴22年と、
大学の指導では20年以上のキャリアを誇る。
50年以上京都に住み、京都国際観光大使も務める。
専門は観光と異文化コミュニケーション。


ポイント第2273回「自分らしく生きる」

学生の時の常識や価値観は、社会人の常識とはまったく違います。大学の教え子、ゼミ生たちが就職すると必ず「先生、大学生と社会人はまったく違う...。」といいます。学生と社会人、それぞれの文化の間(はざま)にいる状態がこうした不安や戸惑いの気持ちを引き起こします。以前の自分を忘れられないまま新しい自分を作っていくプロセス、どっちつかずの立ち位置。みなさんもきっと経験があると思います。

ちょっと古い風習になりますが結婚式の「お色直し」にまつわる話です。花嫁は自分の家で白無垢の婚礼衣装を着て婚礼の儀に臨みます。そのあと嫁ぎ先で披露宴が行われます。披露宴の途中に花嫁は嫁ぎ先が用意した色打掛に着替えます。かつては「相手の家に染まる」という意味が込められた習わしでした。いまは男女平等でお互いにそれぞれの色に染まりますが、独身の自分、結婚した自分、夫婦それぞれ新しい環境や生活に直面します。私たちは様々なところで「はざま」にいる自分を感じています。

みなさんに質問です。私、ジェフ・バーグランドは日本人でしょうか?私は52年も京都に住んでいます。日本語も話します。自分の中には「私は日本人。」という気持ちも当然あります。でも「日本人ですか?」と聞かれてすぐに「はい。」と答えることはできません。「アメリカ人ですか?」と聞かれても同様です。確かにアメリカで生まれ20年間住んでいました。しかしもう50年以上アメリカには住んでいません。純粋なアメリカ人ではないと思います。でも、「日本人でもないし、アメリカ人でもない。」と思いたくはありません。私は「日本人でもあるし、アメリカ人でもある。」と思っています。

「はざま」にいる時の不安は、人それぞれです。はざまからそのコミュニティーの中心で居場所を確保していくためには、まず自分に自信を持つことが大事です。自分と同じような人を見つけて模範にしていく、それが自分自身を肯定する第一歩です。そして社会全体が「はざま」にいる人たちに理解を示すこと=社会の変化も大切です。

自分の内面にある複雑な気持ちに気づくと実は周りの人たちも同じような悩みや不安を持っていることに気づきます。そのことに気づくとやさしくなれます。自分は自分らしく、周りの人たちもその人らしく生きて行けるようになります。

20年ほど前、電車の中で隣の女性の話が聞こえてきました。彼女は友人と話をしていました。20年間イギリスに住んでいて最近、日本に戻って来たそうです。イギリスではずっと外国人として扱われ、自分がはざまにいる気持ちでした。日本に戻ると今度は20年間で自分が変わっていました。いまの日本の生活に馴染めませんでした。「私はどうしたらいいの?」そう言った彼女に私は声を掛けました。彼女はイギリスではずっと外国人として扱われ、自分がはざまにいる気持ちでした。しかし日本に戻ると今度は日本の生活に馴染めません。イギリスにいる20年間で彼女が変わっていたからです。「私はどうしたらいの?」そう言った彼女に私は声を掛けました。

「あなたのような人を異文化コミュニケーションで『カルチュア・マージナル』といいます。」これは、文化の縁(へり)、境界にあること=文化の間(はざま)にいる人を意味します。そしてこう伝えました、「日本もイギリスも両方知っているあなただからこそ橋渡し役ができるのです。」と。彼女はそれまで不安定で心細かった立場に『カルチュア・マージナル』という名前があること、そして研究が進んでいることになぜか安心した様子でした。

自分と周りの人たち、それぞれみんな違うところがあります。それをお互いに認め合い、活かしていくことで自分らしく生きられる社会が実現できるのだと思います。

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