2022年12月18日放送 高野優さん(第2311回)
- 会場
- 大井川公民館(焼津市)
- 講師
- 育児漫画家 高野優
講師紹介
育児漫画家・イラストレーターであり、三姉妹の母。
2015年に、ベストマザー賞文芸部門受賞。
漫画を描きながら話をする独特なスタイルで
子育てに関する講演を行っている。
番組で紹介した本
「続・思春期コロシアム 愛vs哀のファイナル編」著:高野優第2311回「子育てのゴールは?」
私はこれまで、「子育てのゴール」は子どもの自立だと考えてきました。しかし最近になって、子どもが大きな壁を乗り越えることができた時が本当の意味で「子育てのゴール」だと思うようになりました。子どもたちは、いつか大きな壁に当たる時がきます。親は、その壁を自ら乗り越えられる子になって欲しいと願います。そのために親は何ができるのでしょうか?
親や周りの大人から「優しくて温かい励ましの言葉」をたくさんかけてもらった子はその言葉が「お守り」になります。それはどんなことにも立ち向かえる「勇気」と「自信」の証です。逆に厳しく冷たい言葉をかけられた子は、その言葉が「足かせ」になってしまいます。
私は子どもの時、毎日「だめな子なんだから」と怒られて育ちました。その影響なのか、大人になった今でも何か新しいことにチャレンジする時に「どうせできる訳がないんだから」という両親の言葉を思い出して足がすくんでしまいます。その苦い思い出からなかなか抜け出すことができません。だから私はそれを反面教師にして、子どもがどんな言葉をかけて欲しいのか、よく考えてから伝えるようにしています。優しくて温かい言葉をかけてもらった子は、その子自身が親になった時に優しい言葉を伝えることができます。
娘(三女)は小学一年の時から13年間、サッカー一筋に歩んできました。大学入学と同時に地域のクラブチームと契約して、大学生とサッカー選手の二足のわらじを履いていました。ところが去年、試合中に大怪我をしました。入退院を繰り返して手術を受けましたがボールを蹴ることができなくなってしまいました。
人生の岐路、「大きな壁」が彼女の前に立ち塞がりました。娘はしばらくの間、悩んだり落ち込んだり、そして部屋にひきこもって泣いたり。本当につらい時期を過ごしました。一番つらいのは娘です。親があたふたすると余計なプレッシャーをかけてしまうと思い、私はどっしり構えたふりをして見守っていました。子どもの道は、子どもしか歩くことができません。
ある時、娘が清々しい顔をして部屋から出てきました。そして「母さん、やりたいことがみつかったよ」と報告してくれました。目の前の大きな壁を乗り越えた瞬間でした。いまはサッカーとは別の道を選んで前に進んでいます。大きな壁を乗り越えたところに子育てのゴールがあると思います。聞こえてくる「子育て終了のゴング」の音はとてもうれしく思います。でも同じくらいさみしい気持ちもあります。子育ての日々がこんなに柔らかな気持ちで心揺さぶられる日々だとは思いもしませんでした。そんな思いを抱かせてくれた子どもたちに心から感謝しています。