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過去の放送

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2011年9月10日放送 山元加津子さん(第1754回)

会場
常葉学園(静岡市)
講師
作家・エッセイスト 山元加津子

講師紹介

1957年、金沢市生まれ。
富山大学理学部卒業後、小学校の先生を経て、
2014年3月まで石川県内の特別支援学校に勤務。
現在は作家、エッセイストとして活動。
旅行記、イラストなどの制作も行っている。


ポイント第1754回「素晴らしい大ちゃん」

大阪から6年生の時に私のいる特別支援学校に転校してきた、原田大助君の話です。
大ちゃんは、はじめ、私と目も合わせようとせず、
廊下の隅を何やら独り言を言いながら歩いていました。
近づくとそれもやめてしまいます。
私が「大ちゃん、今日は何曜日?」と聞くと、
「うーんそうやなあ、おれカレーライス食べたんやで」とか、
つじつまの合わない答えしか返ってきませんでした。

あとから分かったことですが、大ちゃんは、仲もよくないのに目を合わせたり、
人の言葉を自分の心に入れることなんてできないと思っていたのです。
そんなことに気付かない私は、大ちゃんに小学校1年生の平仮名ばかりの教科書で勉強させていました。

大ちゃんは何かを紙に書くのが大好きで、
そのころ、マス目のある紙に黒い丸のようなものをしきりに書いていて、
それを私たちは「執筆活動」と呼んでいました。
私はただマス目を埋めたいだけと思っていましたが、
ある時、ワープロを大ちゃんの所に持っていったところ、
大ちゃんは、「俺、これ好きやわ」と言って、
あっという間にやり方を覚え、友達の名前を打ちました。
南川泰範という名前なのですが、「泰範」の「泰」がすぐに変換できません。
そこで、大ちゃんは「お家安泰」と打ち、「泰」の字を出したのです。
私はびっくりし、またショックを受けました。
私は大ちゃんに、平仮名だけで勉強させてきたのに、
大ちゃんは何の不平も言わずに私の言うとおりにしてくれていたのです。
本当に悪いことをしたと思いました。

それから大ちゃんが1本の指で入力した内容をプリントアウトしてみると、
「ドラゴンボールZ」の脚本を自分で書いたもので、
それは「執筆活動」で大ちゃんが書いていたのと同じ内容だったのです。
大ちゃんは、文字で人に気持ちを伝えられることを理解し、それから詩を書くようになりました。

「さびしいときは心のかぜです。せきしてはなかんでやさしくしてねてたら1日でなおる」
私の友達が病気でさびしいのに何もできないと話した時に作ってくれた詩です。

大ちゃんには障害がありますが、自分のことが大好きと言います。
私も自分が何も出来ず、悲しくなることがありますが、大ちゃんや学校の子どもたちは、
「カッコちゃんはそのままでいいんや。大好きだから守ってあげるで」と言ってくれるのです。

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