2024年9月22日放送 落合恵子さん(第2399回)
- 会場
- 雄踏文化センター(浜松市)
- 講師
- 作家・クレヨンハウス主宰 落合恵子
講師紹介
1945年栃木県生まれ。執筆活動と並行して、
子どもの本の専門店クレヨンハウスなどを展開。
総合育児・保育雑誌「月刊クーヨン」や、
オーガニックマガジン「いいね」の発行人。
番組で紹介した本
「崖っぷちに立つあなたへ」 著:落合恵子(岩波書店)第2399回「君に居場所はありますか?」
人は誰でも「居場所」が必要です。子どももお年寄りもその真ん中世代も、たくさんでなくてもいいけれど、何かあった時に隠れるところ、小さくなれるところ、深呼吸してもう一度立ち上がって歩き出すところ、居場所は大事です。
例えば、子どもたち。学校で否定されてしまったとき、家庭でも影響を受けてしまう場合が少なからずありますね。だとしたら、第3の場所はどこですか?4番目の居場所はどこなんですか?それを私たち大人は準備できますか?
崖っぷちに立つあなたは、どうか居場所を作ってください。ギリギリまで自分を追い詰めてしまった子どもたちに、次のような言葉を伝えたいと思い書いたことがあります。
『学校が子どもの主たる居場所であったとき、いじめによって自分という存在を否定された子は、ほかに行く場はなくなる。「崖っぷちに立たされてしまったきみに」何度でも伝えたい』ちょっと乱暴な言い方ですよ。『いのちまでかけて、学校に行くことはない』と。
『ほとんどすべてのわたしたちは、「いま」の中に生きている。その「いま」が、屈辱的で耐えがたいとき、「明日」を夢見ることは、たやすいことではない。そのこともわかる。その、難しいことを敢えてやってみないか』
『きみにはまだたくさんの「未体験」がある。「生きていてよかった」と全身の細胞が一斉に叫び出すような甘美で美しいものも、きみの「未体験」の中にはあるはずだ。それらすべてを味わうことなく、悲しく無念な「いま」の中で、きみは生き急いでしまうのか』
いま、幼いお子さんや、10代の難しい年代と言われるお子さんがおられる方たち、あるいはその方たちのおじいちゃん、おばあちゃんに心からお願いします。「いつだって君を見ているよ、しんどくなったらかけておいでよ、待ってるからね」と言える大人に私たちはなっているかどうか、考えてみましょう。20歳の時、苦しくなかったですか。22の時、悩みませんでしたか。私は22歳で就職して、「なんか違ったところに来ちゃったな」と恐ればかりがいつもありましたが、そんな時、「いつだって帰っていいんだよ」という過去の記憶といまの居場所があってどれほど楽だったか。私にとっては母がそうでした。そんな大人でありたい、と思います。
人はどこで、自分の居場所と出会うのか?
一つは、一生懸命生きている日々の中で、たくさんの思い出はできるはずです。その時、とても切ない思い出であっても、後になってみればそこに戻る思い出であることもあります。そしてもう一つは、本屋さんという居場所でもいいし、美味しいものを食べる居場所だっていいし、あるいは大好きな木が一本ある丘の上の景色だっていいのです。自分の居場所を作っていきましょう。誰かが見つけてくるのではなく、自分で見つけていくことが大事ではないかなと思っています。