2024年12月15日放送 尾木直樹さん(第2411回)
- 会場
- 聖隷クリストファー中・高等学校(浜松市)
- 講師
- 教育評論家 尾木直樹
講師紹介
1947年滋賀県生まれ。早稲田大学卒業後、
教師として22年間子ども主役の教育を実践。
その後大学教員に転身し22年教壇に。現在は
法政大学名誉教授、臨床教育研究所「虹」所長。
第2411回「思春期の子育てのコツ」
「思春期」を引き起こすのは、基本的に体の成長や変化です。時々、「思春期がなかった」「反抗期がなかった」などと言う人がいますが、50年余り教育に携わっている僕が見ていても、強弱や長短の違いというのは感じますが、思春期のない子というのは見たことがないです。もちろん日本の子どもだけでなく、例えばドイツ語でも思春期にあたる言葉があり、日本語で直訳すると「疾風怒濤の時代」です。
アメリカの最近の脳科学では、12歳からの脳を「ティーンズ脳」と呼び、11歳から12歳になりティーンズ脳になる時に「脳の回転スピードが変わる」という研究があります。口ごたえをしたり、言い負かされそうになったりする。あれは頭の回転が良くなっているためで、どれぐらいの変化なのかと言うと、なんと100倍も速くなるのだそうです。だから、ああ言えばこう言う。もう大変ですね。
今、スマホ時代になりいいこともたくさんありますが子育ては困難で、自分の経験やキャリア、あるいは年齢で子どもをリードすることができなくなってきています。太古の昔から年配者の言うことはよく聞いたもので、人類始まって以来のことだと思います。
思春期になり脳が100倍速く回転し、なんでもかんでも対応されてしまうようになり、そこにスマホまで加わったこの時代の子育て。乗り越えるポイントが、2つあります。
ひとつは、「言いたいことはスパッと言う」。例えば、通学用に真っ赤なカバンを買ってきて、どう考えても校則違反だという時、喧嘩になってしまうかもしれませんが、「色合いは地味なものにしようと決めたでしょ。これが地味なの?」などと言いたいことはスパッと言うことがすごく重要です。思春期は反抗期とも言われて「なんでだよ、友達もみんな持ってるよ」などと子どもは反抗してきますけれど、そこに巻き込まれ、押されているだけでは絶対にダメ。壁にもならなきゃいけないんです。「お母さんはそれ嫌いだから返しておいで」と言ったら、あとは深追いをしないでパッと引く。引き際がポイントです。
もうひとつのコツは、「なんか悩んでるかな、イライラしてるしどうしたのかな」という時、ありますよね。そういう時は「どうしたの?」このたった5文字、これを発してみる。すると理由を聞いてくれたわけですから、答えやすくなります。答えたことに対してどうするのかというと、ここが大事です。「そりゃ大変だったね」と共感するのです。するとなんか心が楽になって、元気が出てきます。共感されることによって、「あるべき方向」に自分から進もうとしてくれます。そうしたら、「すごいね、あなたは」と、褒めたらいいんです。「どうしたの?」簡単なようでなかなか言えないんですよ、頭に来ちゃうから。ぜひ練習して使ってみてください。
この2つのポイントを生かし、思春期の子どもの子育てを楽しく乗り切っていきましょう。