2009年12月 5日放送 野口健さん(第1665回)
- 会場
- 磐田市立磐田中部小学校
- 講師
- 登山家 野口健
講師紹介
1973年アメリカ生まれ。1999年エベレスト登頂に成功し、
7大陸最高峰世界最年少登頂記録を25歳で樹立。
近年は、ヒマラヤや富士山の清掃活動に加え、
被災地支援などの社会貢献活動を行っている。
第1665回「落ちこぼれの挑戦」
私はアメリカで生まれ、いろいろな国を転々としました。
父は日本人ですが母は混血で、
私には5種類の血が流れています。
だから、こんな風貌で幼い頃は日本語もできませんでした。
高校の時に停学になってしまい、それを父に報告して辞めようかなと呟くと
「ただ何の目的もなく辞めるのは意味がない。
これからどうするのか一人旅でもして考えて来い。」と言われました。
大阪旅行中に植村直己さんの著書「青春に山を賭けて」に出会いました。
一流大学、大手企業に入ることが勝ち組という風潮の中で、
自分で線路を敷いていく植村さんの生き方に憧れ、山登りを始めました。
19歳の時に植村さんが消息を絶った北米最高峰マッキンリーに挑戦しました。
氷河でクレバスに落ちて死ぬ思いを味わい、引き返そうと思いました。
その時に雪原で見つけた凍死した鳥は、ちっぽけな点でした。
自分もこの広大な山の中ではちっぽけな点にすぎないと思ったら、
悩みもコンプレックスも小さなものに感じられました。
エベレストには3回挑戦して、ようやく登頂できました。
落ちこぼれから脱出して自由な世界に入りたいと思い、山にのめり込みました。
そして自由と決断と責任が結びついていることが、2回目の失敗で初めてわかりました。
また、何が成功で何が失敗かは自分で決めようと思ったのもこの頃です。
死ぬ間際に振り返ってみて51%成功していたら自分の人生は成功だと。
ということは、49%は失敗してもいいのです。
山登りを始めてから、エベレスト登頂の成功まで10年かかりました。
私はコツコツ続けていけば何とかなるという自信がつきました。