2012年2月 4日放送 内藤いづみさん(第1773回)
会場 | 広見小学校(富士市) |
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講師 | 在宅ホスピス医 内藤いづみ |
講師紹介 | 1956年山梨県生まれ。福島県立医大卒業。 |
会場 | 広見小学校(富士市) |
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講師 | 在宅ホスピス医 内藤いづみ |
講師紹介 | 1956年山梨県生まれ。福島県立医大卒業。 |
がんにかかってもう治療の方法があまりないという方も、
実はその先、生き抜く道があることをイギリスの研修中に学びました。
そして、それからホスピスケアの啓蒙と実践を続けてきました。
アメリカのベンジャミン・フランクリンは言っています。
「人間には避けられないことが二つある。それは死ぬということと税金だ」
私たちは死が避けられないことを知っているのに、その準備をしていません。
防災訓練はするのに、死ぬ準備をしていない。
それを死の準備教育と呼んでいますが、
ぜひ心の中にヒントとして持って頂きたいと思います。
ホスピスという言葉はなかなか定着しませんが、
私が一つ、到達したゴールがあります。
「宝船」というキーワードです。
18歳の高校生が、学園祭の準備で私の所に取材に来ました。
彼女にホスピスの話をしたところ、
「先生、わかりました。それは自分が持っている宝物に気付くためのケアなんですね」
と言ってくれました。
がんで体や心が苛まれていたら、そんなことに気付けないですね。
その人が自分というものを取り戻すために、
痛みを取り除く薬や様々な援助をして、宝物に気付いてもらう。
そしてそれに気付いた時に、その人は笑顔を取り戻すのです。
医学は日々進歩していますが、人の心はどうでしょうか。
実は万葉集の時代から何も変わっていないのです。
医者は病気だけを見るのではなく、
その患者さんの総合的な人間を見る力が大切だと思っています。
医師になりたての頃、23歳の女性のがん患者に出会いました。
まだ、在宅ケアなどない時代でしたが、
私が彼女に「何がしたい?」と聞くと、「家に帰りたい」と答えました。
お母さんも、「彼女の願いは私の願いです」と言い、
それから3カ月間、自宅で過ごすことができました。
彼女は「私はとても幸せ」と言いました。
教育も同じで、人から押し付けられず、
自分の頭で考えて人生を選び、その答えを愛することが大切です。