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2012年3月17日放送 鎌田實さん(第1779回)

会場 菊川文化会館アエル(菊川市)
講師 医師・作家 鎌田實
講師紹介

1948年東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。
諏訪中央病院名誉院長。地域医療に携わる傍ら、
イラクや東日本の被災地支援にも取り組む。
「がんばらない」、「大・大往生」など著書多数。

番組で紹介した本

*番組で紹介した本
  「アハメドくんのいのちのリレー」
    著者:鎌田 實 画:安藤俊彦
    英訳:ピーター・バラカン 発行:集英社

第1779回「絶望を希望に変える方法」

今日は「にもかかわらず」という言葉を中心にお話しします。

私は6年ほど前に見た新聞記事が気になっていました。
それは、12歳のパレスチナの少年が、街角で敵のイスラエル兵にピストルで撃ち殺され、
その父親が、息子の心臓をイスラエルの子どもに提供したというものでした。

その記事は忘れられず、私なら絶対にそんなことはできない、
きっと相手を許さないだろうと思っていました。
そんな父親がいるのだろうかとも思いました。
でも、その父親が見つかったので、会いに行きました。

腹とこめかみに2発の銃弾を受けた少年は、
敵国イスラエルの病院に運ばれたときにはすでに脳死の状態でしたが、
心臓はまだ動いていました。
そして、医師が、「この子の心臓をイスラエルの病気の子どもにくれないか」と頼んだそうです。
(写真を見せながら)これが少年(アハメド君)の父親のイスマイルさん。
そして、心臓移植を受けて助かったサマーちゃんです(手術時12歳)。

それまで、歩くことも出来ず、死を待つだけだった少女が、
元気になり、学校へも通えるようになりました。
2010年に私が日本のお土産を持って訪ねると、
いつもはこもりがちな彼女が部屋から出てきてくれました。
その彼女を、イスマイルさんは、
「うれしい。息子が生きているみたいだ」と言って抱きしめました。

難民キャンプの中でも、このことを批判する人はいたでしょうが、
彼は「海でおぼれかけている人を見つけたら誰でも飛び込んで助けようとするでしょう。
当たり前のことです」と言いました。

サマーちゃんは医者になって、
今度は自分が、パレスチナの難民キャンプの子どもを助けたいと話してくれました。

もし、彼女がパレスチナの子どもを1人でも助けることができたら、
パレスチナの憎しみは消えるかもしれない、
小さなつながりの中で本物の平和が訪れるかもしれないと思います。

絶望的な状況の中にいる「にもかかわらず」人はこういうことが出来るのです。

私は、「アハメド君のいのちのリレー」という絵本を書きました。
読んでくれた人たちが、「もう戦争はこりごりだ」と言って欲しいと期待しています

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