2013年7月27日放送 矢島稔さん(第1848回)
会場 | 香貫小学校(沼津市) |
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講師 | ぐんま昆虫の森名誉園長 矢島稔 |
講師紹介 | 1930年東京生まれ。昆虫学者。 |
会場 | 香貫小学校(沼津市) |
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講師 | ぐんま昆虫の森名誉園長 矢島稔 |
講師紹介 | 1930年東京生まれ。昆虫学者。 |
よく聞かれることですが、昆虫と虫はどう違うのでしょう。
虫という言葉は古く、大きな辞書で調べてみると、
象形文字で蛇が鎌首をもたげて怒っているような形です。
昆虫という言葉は、明治になってから入ってきました。
江戸時代は何でも「虫」と言っていました。
これは「本草学」という中国の漢の時代に生まれた学問から来ています。
本草学は実用的なものを大切にしました。
本草学では、その虫が人に毒なのか薬なのかという観点から分類されています。
鳥は誰が見ても鳥です。
獣もそうです。
魚も、貝類も私たちはひとめで分類できます。
その鳥・獣・魚・貝の4つ以外の生き物を本草学では「虫」と呼んだのです。
日本で寺島良安という医者が、本草学に基づいて作った「和漢三才図会」には
「クツワムシ」や「マツムシ」、「カネタタキ」といった虫の生態や特徴が
イラストつきで詳しく書かれています。
その昔、蛇は「長虫」と言いましたが、
鳥獣魚貝以外ですから虫ということになり「
虫へん」がついて「蛇」の一文字になりました。
蛙もそうです。
近代に入り、西洋の動物学が日本に入って来ました。
哺乳類や脊椎動物など、その形態によって論理的に分類された
西洋の動物学がそれまでの本草学と混ざりあいました。
西洋の動物学では、昆虫とは頭、胸、腹の3つに分かれており、
羽が胸から4枚生え、同じく6本の足が無ければなりません。
皆さんのよく知っているだんご虫は外来種です。
虫という名前がついていますが、
14本の足があるので昆虫ではありません。
このように明治以降、東洋のものと西洋のものがごちゃ混ぜになり、
虫と昆虫の区別がつかなくなってしまったようです。