2013年11月30日放送 内藤いづみさん(第1865回)
会場 | 大須賀中央公民館(掛川市) |
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講師 | 在宅ホスピス医 内藤いづみ |
講師紹介 | 1956年山梨県生まれ。福島県立医大卒業。 |
会場 | 大須賀中央公民館(掛川市) |
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講師 | 在宅ホスピス医 内藤いづみ |
講師紹介 | 1956年山梨県生まれ。福島県立医大卒業。 |
20年間在宅ホスピス医として活動してきました。
医療に携わり30年たちますが、30年前、目の前で苦しみ、
助けてと言っていたのは末期がんの患者さんたちでした。
その人たちは病名も告げられず、ただ点滴のしずくを眺め、
家に帰りたいと思いながらそれも叶わず、最後まで病院にいました。
医学生のときも、研修医のときも、
私は本当に患者さんがこれで幸せなのだろうかと疑問に感じていました。
私は普通の人と比べてかなり変わり者だったと思いますが、
見本になる先生もいない中、患者さんのそばに行って耳を傾けると、
その人が私の先生になり、教えてくれました。
私が27歳のとき出会った24歳の女の子は1日でも家に帰りたいと言いました。
その声で私はやってみようと決め、家に連れて帰りました。
それが私の在宅ケアの始まりです。
がん末期の人を抱えると、家族とも本人とも仲良くなって心の交流が出来始める頃、
永遠の別れがやってきてしまいます。
私の子どもは10歳の頃、私が開業して経営に苦しんでいるのを見て、
「お母さんはがんの人を助けると言うけど、治してあげないと商売は流行らないよ。
だってお母さんの治癒率は0%だもん。どうしてやるの?」と聞いてきました。
その答えを考えてみると、余命が分かっている人、
やがて家族と別れなければならない人が、「私は幸せです」と教えてくれるからです。
家族に会えたこと、皆さんに助けてもらったことが幸せ。
そして「私は大丈夫。頑張って生きなさい」と言ってくれるのです。
そうした人たちとの出会いが私の仕事を今日まで支えてくれています。
トータルペインと言う言葉があります。
それは「体」の痛みのほかに「心」、「社会」、「スピリチュアル」の4つの痛みをさしています。
その4つが解放されたとき、患者さんは自分を取り戻し、
最後の日々を安らかに過ごすことが出来るようになるのです。