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過去の放送

2013年12月14日放送 内藤いづみさん(第1867回)

会場 大須賀中央公民館(掛川市)
講師 在宅ホスピス医 内藤いづみ
講師紹介

1956年山梨県生まれ。福島県立医大卒業。
1995年甲府市にふじ内科クリニックを開業。
命に寄り添う在宅ホスピスケアを30年近く
実践し、自宅での看取りを支えている。

第1867回「あした野原にでてみよう」

在宅ホスピスというと、何か建物のように思う人がいますが、
実は重いガンにかかり、色々な治療方法がとれなくなった段階の人が、
自分らしくどう生き切るかを考えるケアのことです。

私が医者になったころは、ガンの痛みを緩和する治療はなく、
多くの人が苦しんでいました。
でも今では、世界中で30年間、研究、実践を重ねた結果、
安全に体の痛みをとることができる時代になりました。

とはいえ、患者さんとは必ず別れがやってきます。
そういう人たちとお付き合いして何が残るのかということですが、
私は残された家族やお友達や地域の人たちとずっとつながっています。

初めて在宅ケアをしたのは東京の下町で、患者さんは若い女の子でした。
その子は3ヶ月間家にいて、お母さんの腕に抱かれて天国に行きました。
その頃は在宅のチームもなく、介護保険もなく教えてくれる先生もいませんでしたが、
私はその子が「こうしたい」ということを可能にしてあげたかったのです。

そして何が残ったかというと、彼女の両親や兄弟とそのあとずっと友達になれたことです。
東京に行く度に家に泊まらせてもらうような関係になりました。
私は医者なのか親戚なのかかわからないくらいでした。それが私の財産なのです。

私は心が詰まるとよく万葉集を読みます。
山上憶良の歌に「銀(しろかね)も金(くがね)も玉も何せむにまされる宝子にしかめやも」というものがあります。
どんな金銀財宝も子供という宝にはかなわないという意味ですが、
昔は幼い子が生まれて間もなく亡くなることが多く、
子供が大好きだった憶良は、そうした子どもに対するいとしさの気持ちをその歌に残したのです。
今から1100年も前にこんな歌を詠んだ人がいたのです。

今スマホなどが出回って便利になったといわれますが、
科学技術の発達を勘違いしてはいないでしょうか。
人間の魂の本質は、千年前から少しも変わっていないと思います。

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