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過去の放送

2013年12月21日放送 クミコさん(第1868回)

会場 常葉学園(静岡市)
講師 歌手 クミコ
講師紹介

1982年シャンソニエの老舗「銀巴里」でプロ活動を始める。
2010年「INORI~祈り~」でNHK紅白歌合戦に初出場。
2011年コンサートで訪れた石巻市で東日本大震災に遭遇。
シャンソンに加え、歌謡曲にもアプローチし、精力的に活動中。

第1868回「サヨナラをあげる」

私の歌手のデビューは、銀座の銀巴里というシャンソン喫茶でした。
銀巴里は美輪明宏さんが中心になって引っ張り、
加藤登紀子さんや金子由香利さんなど色々なジャンルの方がいらっしゃいました。
私は当時27歳で、シャンソンなんてサン・トワ・マミーしかそらで歌えなかったのに、
何か個性的という理由で雇ってもらいました。

シャンソン歌手といっても何もわからないので、
家にあった越路吹雪さんの曲を片っ端からコピーして歌ったり、
日本の歌が好きだったので、昔の笠置シヅ子やエノケンの曲なども歌ったりしていました。
そうした中で、自分のオリジナル曲へのこだわりも持ち続けていました。
2010年の紅白歌合戦では「INORI~祈り~」を歌いました。

昔から大きな声で歌うのが大好きで、
小さい頃には「小指の思い出」とか「ゆうべの秘密」などを歌っていると、
母親に「そんな歌を子どもが歌ったらだめ」と叱られたものです。
私はそのたびに、歌というものには何か不思議な扉があって、
その向こう側にはワクワクする大人の世界が広がっているような気がしていました。
私は歌謡曲を歌いたかったのではないのかと思い始めました。

農村や山村や漁村に流れるのはシャンソンではなく、
一日の仕事を終えた人たちがふと口ずさむような歌が歌えたらと思いました。
大震災のあと、被災地に行って歌いました。
仮設住宅には何千という人たちがいるのに、
電子レンジのチンという音さえ隣近所に気を遣い、皆ひっそりと生活しています。
どこで大声を出すのかといえば所々にある集会所です。
皆そこでお茶を飲んだり、しゃべったり、カラオケを歌ったりしています。
私は自分が歌いながら、私がいなくてもみんなが歌える歌がいいなと思いました。

2013年3月に訪問した石巻の老人ホームで、
意識もはっきりせずボーっとしていたおばあさんがいましたが、
私がふと「上を向いて歩こう」をアカペラで歌い始めたとたん、
その方の口が動き始めたのを見て、
これからは自分のために歌うのではなく、
人に歌ってもらえるような歌手になりたいと思うようになりました。

流行歌手になる決心をしたのです。
今はまだ富士山のふもとですが、
頂上を目指して歌っていきます。

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