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過去の放送

2014年7月12日放送 古市佳央さん(第1895回)

会場 菊川文化会館アエル(菊川市)
講師 オープンハートの会 会長 古市佳央
講師紹介

1971年東京都生まれ。
高校1年生の春、
バイク事故で全身の41%にやけどを負うが
奇跡的に一命をとりとめる。
現在は障害者と健常者の垣根をなくし、
生活の質の向上をめざすオープンハートの会の運営や
講演活動を行っている。

第1895回「乗り越えられない壁はない」

16歳の時、バイクで交通事故を起こし、
全身の41%にやけどを負い生死をさまよいました。
ショックだったのは見た目が全く変わってしまったことです。

初め、手を見ました。ガーゼの交換の時です。
あまりに変わり果てたその手を見て、愕然とし、
看護師に聞きました「この手は治る?」と。
看護師は黙って何も言いません。
僕はその顔を見て「治らない」ことを悟りました。

それから毎晩ベッドで泣いていました。
こんな姿で生きていても仕方ない、死のう、と思いました。
でも死ぬ方法がありません。
骨盤も腕も折れていて動くこともできなかったのです。

そんな中、
同じやけどを負った年上の人と同室になりました。
僕は、自分が世界で一番不幸だと思っていましたが、
その人の顔を見て「自分よりひどい」と思いました。
その人も僕を見て「凄い奴が来た」と思ったようですが。

同じ苦しみを持った人に出会うことで
心がスーッと軽くなりました。

またある日、入院中に知り合った女の子に
「古市君のことが好き」と言われました。
僕は「まさかこんな僕を好きなんて」と疑いました。
僕は昔の写真を病院に置いてみんなに見てもらっていて、
皆「カッコよかったね」とか「もったいなかったね」とか
言ってくれるのですが、彼女は違いました。
「何この腐った目!私は今の古市君の目の方がきれいだと思う。
今のあなただから好きになったの」と。
こんな僕でも認めてくれる人がいたのです。

退院すると、また大きな壁がありました。
人の視線です。
そして、一生、人の後ろから歩いて行くのだと思いました。
しかし、車の商売を始めると、
このインパクトのある顔が忘れられないのか、
みんなが僕に優しく声をかけてくれるようになり、
次々に人を紹介してくれるようになりました。

僕はやけどをしたから不利だと思っていたのに
全然そうではなかった。

ある時講演で出かけた小学校で、
小学生から「タイムマシンで昔に戻りたい?」と聞かれ、
僕ははたと考えましたが、「戻りたくない」と答えました。
僕は幸せだったのです。

あるメイクさんの言葉によって人前で話すようになった僕は、
たくさんの言葉を人からもらうようになりましたが、
中でもいちばんうれしいのは
「古市さん、生きていてくれてありがとう」というものでした。

全然知らない人からもらうこの言葉が
僕に壁を乗り越える力をくれたのです。

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