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過去の放送

2014年12月 6日放送 鎌田實さん(第1915回)

会場 常葉学園(静岡市)
講師 医師・作家 鎌田實
講師紹介

1948年東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。
諏訪中央病院名誉院長。地域医療に携わる傍ら、
イラクや東日本の被災地支援にも取り組む。
「がんばらない」、「大・大往生」など著書多数。

第1915回「生きているってすばらしい」

2歳の時に事情があって親が僕を育てられなくなりました。
幸いなことに、
しばらくして僕を育ててくれる新しい両親が現れました。
貧乏で、タクシーの運転手をしていて、
引き取るのは大変だったと思いますが
その人たちに出会えて人生がつながりました。

人間は利己的な生き物です。

自分のために必死で生きることは悪いことではありませんが、
信じられないくらい人は人のために
身を投げ出したりすることがある。なぜでしょうか。

38億年前、地球に奇跡的に生命が誕生しました。
単細胞の生命です。
その生命は遺伝子を持ち始め、
そのことにより私たちは途切らせることなく
命をつないできました。

そして700万年前、猿人が生まれました。

かつて私たちの祖先はアフリカにしかいませんでした。
私はここ数年、
「人間らしくヘンテコでいい」を書くために
アフリカに通い続けて、大地溝帯を旅し、
なぜ私たち祖先が旅をし始めたのか、
なぜ私たちが家族を作ったのかを考えました。

トゥルカナ湖という湖のほとりで
沢山の人の骨が見つかりました。

150万年前のものです。
ある女性の骨を調べてみたところ、
足が悪く、歩けなかったと思われました。

ところが分析すると、ビタミンA過剰症。栄養過多でした。
150万年前の祖先は、弱い人に手を差し伸べていたのです。

人類の祖先はいくつもあり、多くは絶滅していきましたが、
バトンタッチして生き延びてきた種類は、
利己的というだけでなく、
誰かに手を差し伸べることを通し生き伸びてきたのだと思われます。

実現しなかった1968年の「プラハの春」から20年後、
チェコのチェリスト、ウラダン・コチと言う人が
自由を求めて再び立ち上がりました。

すぐに捕えられ、奥さんと3歳の息子は孤立しました。

しかし1通の手紙が届きます。
そこには「私はあなたがた夫妻を尊敬している。」と書かれ、
わずかなお金が入っていました。

奥さんは私に、「その人に会いたい」と言い、
住所を訪ねるとそこは原っぱでした。

でも奥さんは言いました
「私はこれで生きる覚悟が出来た。
息子を守り、主人が自由になるまで生き抜く」と。
人は1人でもわかってくれる人がいれば生きることが出来るのです。

しばらくしてチェコは自由な国になりました。

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