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過去の放送

2015年10月25日放送 今井通子さん(第1957回)

会場 沼津市第一地区センター(沼津市)
講師 医師・登山家 今井通子
講師紹介

1942年東京都生まれ。
東京女子医科大学卒業。
1967年、女性パーティとして世界で初めて
マッターホルン北壁登頂に成功し、
女性として世界初の欧州3大北壁完登者となる。
国内外でトレッキングツアー講師を務める傍ら、
講演執筆活動を行う。

第1957回「森林浴で癒されよう」

1967年にスイスのマッターホルン北壁へ登るために、

ヨーロッパアルプスへ行きました。

さすが空気もきれいだし、美しいなあなどと思っていたのですが、

そのころ、北欧を中心に、

大気汚染や水質汚濁といった環境問題が起きていました。

そして、1972年には国際人間環境会議が開かれ、

生命維持装置としての森林がその機能を失って

破壊されているとの報告がなされていました。

私はそんなことは全く知らずに

アルプスはきれいだなどと言っていたのです。

そのころ、日本では公害問題がありましたが、

あくまでローカルの問題として収められていました。

そこで各国で何をしたかと言うと、

森林の中に1キロにわたってリフトを作り、

清浄な空気を楽しめるようにしたり、

森の中の木を見るために橋をかけたり、

森の中からパラグライダーで飛び出して上空から森を眺めたり、

川をカヌーやラフティングで下ったり、

ゾウなどの動物に乗って森を歩くなど、

世界中で森を楽しむために多くのことが行われているのです。

日本では1980年代まで、森林と言えば木材を搬出する、

あるいは景観として外から眺めるというものでしたが、

1982年に当時林野庁長官だった秋山さんと言う人が

「森林浴」と言う言葉を作りました。

彼がそれを思いついたのは、ロシアのトーキンと言う学者が、

1930年ごろに「森は微生物などを殺傷する能力を持っているが、

人間がその化学物質を感じると

非常にリラックスできる」という発表を受けてのものでした。

その物質はフィトンチッドと言うものです。

(「植物」を意味する「Phyto」と「殺す」を意味する「cide」を合わせた造語)。

当時はまだ科学的には証明されていませんでしたが、

これを提唱したのです。

しかし言葉を作ってもそれが

人間に対してなぜいいのかはわかっていませんでした。

ところが、1990年代に入り、

日本の森林の研究者や医学的な研究をしていた人たちが、

森には確かに人間に対する力があるという

厚生省の求めているような森の力を発見しました。

具体的には、森に行くと都会にいるときよりもストレスが緩和されたり、

憂鬱な人が森から帰ると発展的になったり、

森にいると血圧の低い人は上がり、高い人は下がるなどです。

2004年に森林セラピーと言う言葉を生み出し、

全国に森林セラピーの基地を作りました。

被験者を森に連れて行き、血圧の測定や唾液でストレスの状態を測りました。

すると、4歳や5歳の子供でも、

体の状態がよくなり、ストレスが解消されていることがわかりました。

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