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過去の放送

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過去の放送

2016年5月15日放送 奥村幸治さん(第1985回)

会場 菊川文化会館アエル(菊川市)
講師 NPO法人ベースボールスピリッツ理事長 奥村幸治
講師紹介

1994年、イチロー選手が210安打達成時に専属の打撃投手を務め、
"イチローの恋人"として知られる。
田中将大選手が所属していた「宝塚ボーイズ」監督。
世界少年野球大会で日本代表チームを率い、3年連続世界一に。

第1985回「田中将大選手に出会って」

宝塚ボーイズというチームを立ち上げて10数年たちましたが、

その中で忘れもしないのがマー君との出会いです。

中学1年4月1日の入団の日、

マー君が僕のところに泣きそうな顔でやって来て

「すみません、グローブ忘れました」と言ったのです。

そんなマー君が一気に変わったのは中学2年の夏、

先輩とともに試合に出ていて、勝てば兵庫県大会優勝の決勝戦、

1点差を追う最終回、2塁3塁の場面で4番の先輩が敬遠されてバッターはマー君。

一打逆転です。

ところが、マー君は何と初球を簡単に打ち上げて

ライトへのファールフライであえなくゲームセット。

ベンチも「何でもっと粘らないの?」とブーイングです。

しかし、その時の悔しさで、マー君にスイッチが入りました。

僕はマー君を次の新チームのキャプテンに指名しましたが、

彼はマウンドに立つと鬼のような形相で相手の前に立ちはだかり、

チームメイトがミスをすれば、僕が叱るより先に厳しい言葉を浴びせてくれました。

マー君は3年生の夏までは地元の高校への進学が決まっていましたが、

慕っていたその高校の監督がほかの学校に行ってしまい、

諦めざるを得なくなりました。

そんなとき、知り合いから、北海道にいいチームがあるとの情報が入りました。

それが駒大苫小牧でした。

マー君に「見に行くか」と聞くと「行ってみたい」と言います。

そこで私と二人で行きました。

苫小牧のベンチに座って一日練習を見せてもらい、

帰りの支度を始めたとき、

2年生の佐々木キャプテンの「集合!」という声がかかりました。

そしてマー君を選手たちの円陣の真ん中に置いて

「今日は遠くから北海道まで来てくれてありがとう。

もしよかったら一緒に野球やらないか。」と言ったのです。

私は長年野球をしてきてそんなことが言えるキャプテンを見たことはありませんでした。

帰りの飛行機の中で、マー君は「北海道に行く」と言いました。

自分もあんなキャプテンみたいになりたいと言うのが理由でした。

そして、そのキャプテン佐々木君が3年、マー君1年の夏、

駒大苫小牧は全国大会で初優勝を果たしたのです。

元楽天の星野監督が言いました。

「マー君のすごいところは、

ダルビッシュがいれば自分からピッチングのことを聞きに行く。

その向上心だ。」と。

当時の駒大苫小牧の香田監督は

いつも「グラウンドを訪れるすべての人にアドバイスをもらいなさい」と選手達に言っていました。

マー君の原点はここにあると思います。

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