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過去の放送

2016年12月25日放送 野口健さん(第2014回)

会場 静岡労政会館(静岡市)
講師 登山家 野口健
講師紹介

1973年アメリカ生まれ。1999年エベレスト登頂に成功し、
7大陸最高峰世界最年少登頂記録を25歳で樹立。
近年は、ヒマラヤや富士山の清掃活動に加え、
被災地支援などの社会貢献活動を行っている。

第2014回「ネパール地震 支援と復興」

2015年、ネパールで81年ぶりに地震が起きたとき、

僕はちょうどヒマラヤにいて被災しました。

エベレスト目指して4600メートルあたりの峠を越えようと斜面を登っていた時でした。

その日は雪が降っていました。

12時ごろ、「ズン」という感じの衝撃があり、

すぐにはなんだかわからず、雪崩でもあったかと思っていると、

景色が横に揺れ出して地震とわかりました。

すると上の方から人の頭ほどの石が落ちてきて

空気を切り裂くような音がしました。

またヤク(牛)も落ちてきました。当たればアウトです。

走っては岩陰に隠れ、また走っては隠れという繰り返しで、

何とか600メートル下のシェルパの村にたどり着きました。

すると、月の光の中で見えたのは変わり果てた村の姿でした。

石を積み上げて出来ていた家々は横の揺れには弱く、

すべて崩れてしまっていました。

村の人たちは皆放心状態で、目もうつろに立ち尽くしていました。

僕たちにとって村は安全と思っていたので、脱力感に襲われました。

地震の直後、ふもとのベースキャンプのテントが、

数キロも離れたところで起きた氷河の落下による爆風で飛ばされ、

何人もが亡くなりました。

日々余震が続く中、僕は撤退するか、

残るのかの選択を迫られていました。

そんな時、たまたま衛星電話がつながり、日本と話が出来ました。

すると、日本ではエべレストのベースキャンプと

首都カトマンズ以外のニュースが流れていないとのことでした。

僕はそれで1つの役割を見つけたと思いました。

そして、エベレスト街道と呼ばれるシェルパの村々を訪ね、

被害の度合いを調べて被害状況のリストを作り、

現場の写真を撮影して日本に送りました。 

悲しいことしかない現場を撮影するのはとても厳しいものでしたが、

それが使命だと思いながらカメラを向けました。

4000メートルの高地で多くの人が

家を失ったまま雨季を迎えるのはとても辛いものです。

頑張れなどという言葉ではなく、現物が必要と考え、

ヒマラヤ基金を立ち上げました。

日本に帰ると、多くの人々が寄付をしてくれて

1億200万もの基金が集まっていました。

実は僕もとても疲れていて、

逃げたいという気持ちも芽生えていたのですが、

沢山の人たちの思いを受け取って、

大型テントをインドの会社に頼んで作ってもらい、村に送りました。 

そして沢山の現金をズタ袋に詰めて再びヒマラヤに向かいました。

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