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過去の放送

2018年5月13日放送 相田一人さん(第2081回)

会場 大井川公民館(焼津市)
講師 相田みつを美術館館長 相田一人
講師紹介

1955年栃木県生まれ。相田みつをの長男。
東京国際フォーラムにある「相田みつを美術館」館長。
現在、美術館業務の傍ら、
全国各地での講演活動や執筆活動を行っている。

第2081回「いのちいっぱいじぶんの花を」

私の父「相田みつを」は書家であり詩人ですが、

その作品はいったい誰に向けて書いていたのかと思う事があります。

基本的には作品を見る人に向けて書いたと思うのですが、

実際は父が父自身、

相田みつをが相田みつを自身に向けて書いたメッセージじゃないかと思っています。

そんな父の作品の中に子ども、

つまり息子である私に向けて書いたのではないかと思われる作品があります。

代表的なのは「いのちいっぱいじぶんの花を」という作品です。

この作品についてお話する前に私の名前についてお話します。

私の名前は「一人」と書いて「かずひと」と読みます。

「かずひと」と父に命名される前、私はどんな名前を付けられようとしていたと思いますか?

聞いてびっくりされると思います。「平凡」です。読み方もそのまま「へいぼん」です。

父がなぜこの名前を考えたかというと、

「人間として極々あたりまえの人生を送ってほしい」という期待があったようです。

これに対して周りの大人は大反対したそうです。

大きくなったらいじめられるのではないかという不安が当然起こります。

「平凡」を反対されて父が次に考えたのは「凡平」です。

「ぼんぺい」。そのまま「平凡」をひっくり返しただけです。

そのくらい父は「平凡」にこだわったのではないかと思います。

しかしこれも周りからの猛反対に遭い三回目に考えてくれた名前が「一人(かずひと)」です。

私が生まれた頃、我が家は貧乏のどん底だったようです。

父は弟子も取らず副業も持たない、筆一本での生活でした。

今でこそ作品が認められ有名になりましたが、

当時は無名で書いた作品もなかなか売れず大変だったようです。

「ひとり」でもたくましく育ってほしい、そんな思いから「一人」と名付けられたのでしょう。

そんな父が書いた「いのちいっぱいじぶんの花を」という言葉の意味は、

私に付けようとして付けられなかった名前「平凡」と同じなのだと思います。

「人間として当たり前の人生を精一杯、当たり前に送って欲しい。」

この作品には私に送ったそんなメッセージが込められていると思います。

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