2020年1月26日放送 菊地幸夫さん(第2163回)
会場 | 原地区センター(沼津市) |
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講師 | 弁護士 菊地幸夫 |
講師紹介 | 中央大学法学部卒業。元司法研修所刑事弁護教官。 |
会場 | 原地区センター(沼津市) |
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講師 | 弁護士 菊地幸夫 |
講師紹介 | 中央大学法学部卒業。元司法研修所刑事弁護教官。 |
私たち弁護士は、オレオレ詐欺の被害にあった方からよく相談を受けます。
しかし、被害者の立場からだけでなく、逆のパターンもあります。
罪を犯した人から直接弁護を依頼されるのではなく、
国から選任される国選弁護の仕事の中でオレオレ詐欺の犯人と出会うことがあるのです。
オレオレ詐欺は、電話などの通信手段を使って不特定多数の人を騙す
「特殊詐欺」と言われるものです。
この特殊詐欺によって、日本全体で、一年間にどれくらいの被害額があると思いますか?
最近の数字では、四百数十億円と言われています。
これは、表に出ている数字だけです。
騙された事が恥ずかしくて誰にも言えず、泣き寝入りしている人も含めると、
もしかしたらこの倍以上になるかもしれません。
年間に四百数十億円だったとしても、一日に換算すると一億円以上の被害が出ている訳です。
これが日本の現状です。
私が担当した15歳の少年の話をします。彼はごく普通の少年でした。
ところが、一生懸命打ち込んでいたクラブ活動を辞めた時、
ぽっかりと彼の心の中に穴が空いてしまいました。
高校生だった彼にとって、午後三時に学校が終わり、そのまま家に帰るのは早すぎます。
時間潰しのためフラフラと街を歩いていると、声を掛けてくる人がいました。
「アルバイトしない?小さい物を20分くらい運ぶだけで2万円あげる。」
と言われました。そうです、その小さい物とはお金の事。
オレオレ詐欺に騙された人の家に行ってお金を貰ってくる、
「受け子」のアルバイトだったのです。
最初、彼は何も知らずにそのアルバイトを始めました。
段々と彼の懐にお金が溜まってきました。悪い気はしなかったそうです。
その内、自分のアルバイトがどのような事なのか分かってきましたが、
彼はお金の魅力に負けてアルバイトを続けました。
金銭感覚が麻痺してしまったのです。
彼の体験談から犯罪の手口を紐解きつつ、
どうすればオレオレ詐欺に騙されないようになるのか、
そのヒントをお話したいと思います。