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過去の放送

2021年1月17日放送 鎌田實さん(第2213回)

会場 丸森まちづくりセンター(宮城県丸森町)
講師 医師・作家 鎌田實
講師紹介

1948年東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。
諏訪中央病院名誉院長。地域医療に携わる傍ら、
イラクや東日本の被災地支援にも取り組む。
「がんばらない」、「大・大往生」など著書多数。

番組で紹介した本 『それでも、幸せになれる「価値大転換時代」の乗りこえ方』著:鎌田實(清流出版)

第2213回「それでも、幸せになれる」

認知症のケアで注目される「バリデーション」という療法があります。

耳を傾け、共感することです。

新型コロナウイルスとの闘いが長期化する中、

私たちの価値観も大きく変わりつつあります。

しかし大切なのは相手の価値を認め、共感することではないでしょうか?


若年性アルツハイマー病の男性。

彼は45歳くらいから徐々に症状が出始め、50歳の時に病気と診断されました。

それから17年が経ちますが今も毎日外出しています。

時々家に帰れなくなってしまうこともあります。

でもSOSカードで名前や住所を見た人が送ってくれるそうです。

彼は言います。

「認知症になって生活は不便になったけど、僕は幸せです。」と。

なぜなら彼はやりたいことに挑戦しているからです。

「一曲でいいから弾いてみたい。」とピアノの先生について練習しています。

絵の勉強も始めました。自由な発想でピカソのような絵を描きます。

彼の記憶はまだらです。

でも自分の脳の良い部分を活かして最後まで自分らしく生きようとしてます。

そこに幸せがあるのだと思います。


進行性の難病のじいちゃん、この人とは長い付き合いでした。

出会ったのは僕がまだ若い頃。当時の僕は

「直す方法がありません。いずれ歩けなくなります。」と正直に伝えました。

そして「最後まで付き合います。」と約束しました。

それから10年、往診で尋ねた時、既に歩けなくなっていたじいちゃんが

パソコンの前に座ってグラフを作っていました。

株式投資のグラフでした。僕はうれしくなりました。

じいちゃんが好きなことをやっていることで家には笑いが絶えません。

笑いがあると余裕が生まれます。

じいちゃんの最期は東日本大震災の頃でした。

当時99歳、僕が連絡を受けた時は、既に血圧が計れない状態でした。

電話口で息子さんが

「先生、帰ってこなくていい。いまは東北が大変なんだ。東北の人を助けてくれ。」

涙声でした。

被災地支援が一段落して戻った時には間に合いませんでした。

僕が枕元に座ると息子さんがカメラを持ってきて「先生、笑ってください。」と。

その写真を棺に入れて、「最後まで面倒を見る」という約束を

私が守ったことをじいちゃんに伝えてくれました。


価値を認め合い、共感することで、

被災地でもコロナの時代でも『それでも、幸せになれる』。

僕はそう思います。

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