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過去の放送

2021年2月21日放送 内藤いづみさん(第2218回)

会場 沼津市民文化センター(沼津市)
講師 在宅ホスピス医 内藤いづみ
講師紹介

1956年山梨県生まれ。福島県立医大卒業。
1995年甲府市にふじ内科クリニックを開業。
命に寄り添う在宅ホスピスケアを30年近く
実践し、自宅での看取りを支えている。

番組で紹介した本 「2020年、今を生きる。未来が、より良き人間社会になるために」内藤いづみ(ふじ内科クリニック)

第2218回「あなたらしく生き抜くために」

新型コロナウイルスの感染が広がり始めた頃、医師である私も正直うろたえました。

この病にかかったら死んでしまうかもしれない...。

そこで「陽性で入院」と言われたときに持っていくカバンを事前に準備しようと思いました。

どこに何があるのか、家族もわからないだろうし、

わずかな確率とはいえ帰って来られない旅になるかもしれません。

私は入院期間に読みたい本を2冊、

そして大切な写真を2枚入れようと思い、家族と幸せな時間を共有した写真、

そして私が赤ちゃんの頃、父と母、おばあちゃんに抱かれている白黒写真の2枚を選びました。

身の回りの荷物を詰めてカバンの置き場所を家族に伝えました。

すると私の心はスーっと穏やかになったのです。


ここ最近不思議なことに、重い病気に罹っても家にいたいという人が増えました。

入院してしまうと家族と会えなくなるからです。

そして感染を避けるために友情や地域の絆が後回しにされてしまっています。

誰もがいつか天に召される時が来ます。

遺すのは家族だけではありません。

友達や近所の人たちにも愛情を遺して欲しいと思います。

それはあなたの一番近くにいる身内に言い遺すということです。

友情や地域の絆を結び、メッセージを遺すことも「準備」のひとつです。


自分らしい生き方を貫いた患者さんも大勢いました。

そのほとんどが頑固者。

80才を過ぎたある男性は70代後半からあちこちに癌がみつかり手術や治療が続きました。

彼の頑固さは「もうこれ以上、病院に行かせないで欲しい」ということでした。

この方が寝たきりになった時、奥さんはしっかりと寄り添い、

お嫁さんは家族全員で引っ越してきて一緒に看取りました。

死亡確認の時、私は小学生の孫3人に伝えました。

「おじいちゃんは『みんなと一緒にいたい』という思いを

あなたたちのお母さんやおばあちゃんに果たしてもらって、

『ありがとう』って顔で逝ったんだよ。

だからおじいちゃんのことを思い出してあげて。

それがおじいちゃんの一番喜ぶことだから。」


わがままを通せるのも、そのすべてを愛し支えてくれる人たちが周りにいるからです。

家族はもちろん新しい友人や仲間との絆、自分を愛してくれる人たちを作ること、

それも準備のひとつ。そしてみなさんに差し上げる大きな宿題です。

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