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2021年12月12日放送 大日向雅美さん(第2260回)

会場 御殿場市民交流センターふじざくら(御殿場市)
講師 恵泉女学園大学学長 大日向雅美
講師紹介

1950年生まれ。
お茶の水女子大学大学院修士課程修了。
2016年、恵泉女学院大学学長に。
専門は発達心理学。
母親の育児ストレスや育児不安を研究。
子育てひろばの施設長も務める。

番組で紹介した本 「もう悩まない 自己肯定の幸せ子育て」著:大日向雅美(河出書房新社)

第2260回「ママの自分時間の大切さ」

子育ては楽しいですか?子育てには苦と楽、両方があります。

みなさんが最初にママになった時、どんな言葉が出てきたでしょうか?

待ちに待った赤ちゃんが産まれて子育てがスタートした時、

ほどなくしてほとんどの人が「こんなはずじゃなかった...」と。

赤ちゃんの笑顔はかわいいです。

でもイメージと裏腹に夜泣きはつらい。なかなか泣き止まない。

せっかく作った離乳食も吐き出されたり、散らかされたり。

まったく聞き訳がない...もう赤ちゃんがわからない。

「こんなはずじゃなかった。」

とりわけ自分の時間がないママの生活は本当に胸が痛みます。

「トイレにひとりで入りたい。」

「両手を使って食事をしたい。」

「たまにでいいから手足を伸ばしてゆっくりお風呂に入りたい。」

こうした思いは決してわがままでも贅沢な欲求でもありません。

でもこうしたささやかな自分時間をどうしてママたちは持てないのでしょうか?

ママたちはどんなに育児に疲れていてもこうつぶやきます。

「私が至らないからでしょうか?」

あるお母さんは4歳と2歳の2人の男の子を育てています。

2人とも家の中を駆け回って大変です。一日中大きな声で叱ってしまいます。

もっと優しいママになりたかった...。本当に苦しんでいました。

でもそれは彼女がいけないのではありません。

いまの子育ての環境が厳しすぎるのです。

女性は誰にでも育児の適性があるという「母性愛神話」、

また子どもが小さいうち3歳くらいまでは

お母さんが育児に専念して当たり前という「3歳児神話」、

こうした神話へのとらわれが根強く、その風潮はいまも残っています。

「育児がつらい」「自分の時間が欲しい」と思っているママたちは

それだけ育児をしている証です。

自分の時間が持てないほど頑張っているのです。

もうこれ以上、頑張る必要はありません。


私が運営にかかわっている子育て支援のNPOでは

『理由を問わない一時預かり』を実施しています。

10年ほど前、ひとりのお母さんが子どもを預けに来ました。

本当におずおずと...。

2時間の預かり、別れ際に赤ちゃんが泣いていましたがスタッフは

「安心してお出かけください。」とお母さんの背中を押しました。

2時間経たないうちにそのお母さんは戻って来ました。

特に用事があって預けたのではなかったそうです。

子育てがつらくなって子どもに手をあげてしまいそうでした。

夫に相談すると「一時預かりを使ってみたらどう?」と言ってくれました。

子どもを預けて喫茶店に入ったとき「あ~、こんなに心がほぐれるんだ。」。

喫茶店に向かう途中の空の青さにも驚きました。

コーヒーを飲みながらBGMを聞いていたら

子どものかわいい顔しか浮かばなかったそうです。

そして「子どもに会いたい」。

居ても立ってもいられず迎えに来たそうです。

ママが自分の時間を持ちたいということは

人が人として生きていくための基本的な欲求です。

つらい時はひとりで頑張らずにいろいろな人の力を借りましょう。

そして地域や社会に自分の居場所をみつけて活き活きと生活していく。

ママ自身が自己肯定感を持てた時に初めて

子どもの「その子らしさ」をあるがままに認めることができるのだと思います。

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