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2021年12月26日放送 大日向雅美さん(第2262回)

会場 御殿場市民交流センターふじざくら(御殿場市)
講師 恵泉女学園大学学長 大日向雅美
講師紹介

1950年生まれ。
お茶の水女子大学大学院修士課程修了。
2016年、恵泉女学院大学学長に。
専門は発達心理学。
母親の育児ストレスや育児不安を研究。
子育てひろばの施設長も務める。

番組で紹介した本 『共生社会をひらく シニア世代の子育て支援
 -子育てひろば「あい・ぽーと」2003~2021』
著:大日向雅美+NPO法人あい・ぽーとステーション(日本評論社)

第2262回「地域のみんなで子育て支援を」

子育ては家庭だけで、親だけで、まして母親だけでできるものではありません。

親が子育てを楽しむためにも地域、社会のみんなが子育て支援に立ち上がることが大切です。

そして親、とりわけママたちは地域の子育て支援を上手に活用して、

周囲の人たちに上手に甘えていいのです。


昨今の新型コロナウイルス問題で

私たちは未曽有の変化に翻弄されてつらい日々を過ごしました。

しかしそこから私たちの日常は人と人の絆の中で暮らし、

その中で子どもは育っていくことを改めて教えられました。


今の子育てをめぐる状況をみると少子化が進み、

その背景には子どもを産みたくても産めない、

安心して暮らせない社会情勢があります。

そして食事が思うように取れない、進学ができない貧困状態の子どもが

日本の社会で7人に1人の割合と言われています。

さらに児童虐待の相談対応件数は年間20万件を超える厳しい状況です。


2019年、児童福祉法の一部改正で体罰が禁止されました。

この法律は親を罰する目的ではありません。罰則規定はないのです。

まず子どもの人権を最優先で尊重し、他方で大変な状況で子育てをしている親を守る。

どうしたら親を支えることができるのか、社会全体で検討していく必要があります。

地域のみんなで子育てを支える社会が求められているのです。


私が関わっているNPO法人あい・ぽーとステーションは

『子育て支援は親支援』をキーワードに、

理由を問わない一時預かりを年中無休で実施しています。

それを支えているのが地域の人材です。


『子育て・家族支援者』は子育てが一段落した女性たちが中心になって子育てママを支援します。

そのために支援員には90分1コマ、計30コマの養成講座を受講して

約3カ月間かけて専門知識を学んでもらいます。

「遠い実家よりも地域ですぐそばにいる支援員さん」子育てママには頼りになる存在です。

また支援員の女性たちも人生の第二ステージに人の役に立てることがあったと喜んでいます。


そしてかつて企業戦士だった団塊の世代の男性たちも支援に乗り出しています。

シニア世代の男性たちが

「子育てまちづくり支援プロデューサー(通称まちプロさん)」として活躍しています。

高度経済成長を支え、厳しい国際競争を生き抜いてきた彼らは

豊かな職業経験や知識、技術を持っています。そこで仕掛けてみました。

「現役時代の名刺で勝負して!」このキャッチコピーが響いたようです。

全国から300人以上が集まりました。

参加の動機は「定年退職後も社会とつながっていたい」というもの。

またもうひとつの動機は懺悔です。

自分の子育ての時はおむつひとつ換えなかった...。

さらに妻に背中を押されたという人もいます。


「支え、支えられてお互いさま」

子どもだけだった地域の子育てひろばに、いま新しい風が吹き始めています。

シニア世代にとっては「もう一度誰かの役に立てる」と生きがいづくりにつながっています。

若いパパ・ママ世代は助けられ支えられて子育てに喜びと安心を覚えます。

地域で暮らすあらゆる世代の人たちが、

お互いに点を線にそして面につなげていけるような社会。

それが誰ひとり取り残さない『共生』社会につながる道だと思います。

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