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過去の放送

2022年1月 9日放送 ダニエル・カールさん(第2263回)

会場 大富公民館(焼津市)
講師 山形弁研究家・タレント ダニエル・カール
講師紹介

1960年アメリカ生まれ。高校時代、奈良に1年間留学。
大学時代にも来日し、大阪・京都・佐渡島で過ごす。 
大学卒業後、山形県に文部省(当時)英語指導主事助手
として3年間赴任し、山形弁をマスターする。

番組で紹介した本 「ちちゃこいやつ」作:ロブ・ハドソン/訳:ダニエル・カール(マイクロマガジン社)

第2263回「日本語って やっぱ奥深い」

私が初めて日本に来たのは44年前、高校生の時です。

当時、日本に興味がありましたが日本語はまったく話せませんでした。

奈良県の南部、和歌山県との県境近くにある高校に留学しました。

しかし周りに日本語の先生もいないし、英語を話せる人もいませんでした。

このとき日本語の勉強を自分で頑張るしかないと思いました。


幸いにもアメリカの高校でドイツ語を勉強していたので、

外国語を学ぶときのコツは覚えていました。

まず耳を使って単語を集めます。休み時間の会話に耳を傾け、

繰り返し頻度が高い単語をピックアップしてリストを作ります。

集めた単語を辞書で調べて毎晩暗記するのが私の宿題でした。

奈良県にいる間に一人旅ができるくらいの日本語力がつき、

その一年間で日本のことがますます好きになりました。


大学を卒業して三度目の来日は仕事です。

文部省(当時)の斡旋で山形県に赴任しました。

勤務先は県教育委員会、山形県では初めての英語指導主事助手に採用されました。

電車で山形に到着して駅前の商店街を歩いていた時のことです。

何気なく周りから聞こえてきたのが「んだ。」という声です。

大阪の大学に留学していた時、

国語の先生に『ん』から始まる日本の言葉はないと教わりました。

辞書で調べてみても『ん』で始まる言葉は見当たりません。


ある時、上司に「『んだ』というのは一体何なのか?」尋ねてみました。

すると上司は大きなメモ用紙に『んだ』と書いて、

「この表現を分析するためにはこれを二つの単語に分ける必要がある。」といいました。

思わず「『ん』と『だ』は二つの単語なんですか?」と聞き返すと、

上司の答えは「んだ。」でした。


上司の説明では、まず『だ』は山形弁で「です。」という意味。

次に『ん』という単語。

例えば、他の地方でも相槌を打つときは「うん。」と言います。

それに近い標準語の表現が「そう。」という言葉。

つまり「んだ。」=「そうです。」ということになります。


また、山形弁は単語の真ん中に『ん』が入ることも特徴です。

『めずらしい』が『めんずらしい』、『すばらしい』が『すんばらしい』になります。

そば処の山形で私が温かい月見そばを注文して少し冷めるのを待っていると、

隣の人から「わらわらそんばけは。」と声をかけられました。

まったく意味がわかりませんでした。

『わらわら』は山形弁で『早く』、『そんば』はもちろん『そば』のこと。

『け』は『食べなさい』という意味です。

『食べなさい』は命令形で『食え』といいますがそれをさらに短くしたのが『け』です。

隣の人はそば通で、熱いうちに「早く食べなさい。」と教えてくれたのです。


ギネスブックにも掲載されている世界一短い会話も山形弁だそうです。

お母さんが「食べなさい。」すると子どもが「食べるよ。」という会話。

それが「け。」「く。」わずか2文字で終わります。


山形弁の奥の深さもそうですが、

日本全国どこへ行ってもご当地の言葉はバラエティが豊富です。

いろいろな方言があって日本語が年々少しずつ進化して

さらにおもしろくなっていくのだと思います。

奥の深い日本語を遺していけるように、

みなさんも方言を積極的に使って欲しいと思います。

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