2022年2月13日放送 鎌田實さん(第2267回)
会場 | 原地区センター(沼津市) |
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講師 | 医師・作家 鎌田實 |
講師紹介 | 1948年東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。 |
番組で紹介した本 | 「ちょうどいい孤独」著:鎌田實(かんき出版) |
会場 | 原地区センター(沼津市) |
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講師 | 医師・作家 鎌田實 |
講師紹介 | 1948年東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。 |
番組で紹介した本 | 「ちょうどいい孤独」著:鎌田實(かんき出版) |
私たち日本人は群れること、空気を読むことを求められてきたような気がします。
でもコロナ禍でその状況は変わりました。
一人で自分の時間をどのように築いていったらいいのか?
「ソロ力」について考えてみたいと思います。
まず大事なのが自己決定です。
自分で覚悟して決めること。意外と苦手な人も多いかもしれません。
自己決定力をつけていくためにも「ソロ力」を磨いていくことが大切です。
次に人生最後の最後は個人戦です。
先日、緩和ケア病棟の回診をしました。
すると92歳の末期ガンの男性に痰に血が混じる「喀血」の症状が見られました。
主治医が止血剤を出そうとすると男性は
「先生、肺ガンだから仕方ないんだよ。」と止血剤を断りました。
いまの心境を聞くと
「もう全部準備している。最後の最後は自分の命だから...」と。
悔いがないのか尋ねると、男性はニヤッと笑って
「航海は海でするものだ。人生で後悔はしないよ。」
ユーモアを持って悠々としていました。
家族がいたとしてもやはり最後の最後は個人戦です。
そのためにも「ソロ力」は必要なのです。
そして自分時間を大切に過ごすこと。
ソロキャンプにお一人様ご飯、コロナ禍でソロ活動が見直されました。
ただ、孤独はいいのですが「孤立」となると注意が必要です。
メタボリックシンドロームや肥満は脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めます。
「孤立」はさらにその2倍リスクが高いともいわれます。
「孤立」すると人間は脆いということを知っておいてください。
ソーシャルディスタンス(社会的距離)とよく言われます。
しかしフィジカルディスタンス=身体的な距離を取ることが正しいと思います。
ソーシャルはあくまでコネクティングで。
一人の時間を上手に使って自分を成長させながら、
社会的なつながりを大事にすることを心掛けてください。
日本人の80%が陥るとされているのがミッドライフクライシス(中年危機)です。
この時期に生活習慣病が始まったり、社会的なストレスが増えたり、
子どもが自立して家を離れたりします。
すると「虚しさ」や「切なさ」、心と身体の不安定さが増して危機に陥るのです。
実は私も陥りました。
そして「自分は本当は何をしたかったのだろう...」と考えました。
その結果、イラクの難民キャンプやチェルノブイリの被災地へ通うようになりました。
「人を助ける仕事がしたい。」ソロ立ちです。
それが私の人生の二毛作目になりました。
大切なのは孤立ではなく「個立」だと思います。
自分でしっかりと立って自己決定ができるようになる...。
一人ひとりが自ら立つことが大事です。
そして「個立」だけど無縁ではありません。
人とのつながりを大切にすること=「有縁」です。
「個立有縁」でひとり時間を楽しむことが成長のエネルギーになります。
ひとり時間と仲間との絆、そのバランス楽しむことが「ちょうどいい孤独」だと思います。