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過去の放送

2022年6月 5日放送 齋藤孝さん(第2283回)

会場 三島市民生涯学習センター(三島市)
講師 明治大学文学部教授 齋藤孝
講師紹介

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、
同大学院教育学研究科博士課程等を経て現職。
専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。
「声に出して読みたい日本語」ほか、著書多数。

番組で紹介した本 『本当の「心の強さ」ってなんだろう? 一生を支える折れないメンタルのつくり方』著:齋藤孝(誠文堂新光社)

第2283回「柳のメンタル」

いまの若者は傷つきやすく、心が折れやすいといわれます。大学で30年以上、若者と付き合っていると確かにそう思います。メンタルの強さは生まれ持った資質ではなく、自分で身につけていく力です。そして自分を守るための武器でもあります。

例えば、人前でジョークが言えるのは「心の強さ」ゆえです。滑ったらどうしよう、受けなかったらどうしよう...。そこで大事なのは勇気です。心を強く持ってジョークを言った人には、笑いの返礼をして称えてより勇気を高めましょう。心の強さは、ある意味「筋力」と似ています。普段使わないと力が落ちてしまいます。

勝海舟は「自分の基礎を作ったのは剣術と禅の修行だった」と言っています。そこで培った「胆力」のおかげでいざという場面で腹が座っていたそうです。胆力は臆せず、動じない心。息を吐きながら、へその下にある臍下丹田(せいかたんでん)という部分に意識を降ろしていきます。すると気が鎮まります。

怒りや嫌な気持ちを鎮めるのにかかる時間は6秒と言われます。私が6秒の目安にしているセリフがあります。

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」(平家物語)

世の中は常に移り変わっています。だから怒りの感情も水のように流していく。「驕れる者も久しからず...」です。日本人は昔から感情をコントロールする術を培ってきました。無常観は最強の武器になります。

知性とまごころと勇気「知・仁・勇」を併せ持ち三位一体でバランスを保つと心は安定します。身体の部分にあてはめると知は頭、仁は胸、勇は臍下丹田です。身体と精神、ふたつの土台がしっかりと重なって心を支える「鏡もち理論」が豊かに育まれると心は安定します。常に気を楽にして大きく息を吐き、穏やかに気を鎮めて心の強さを培っていきましょう。

心が折れやすい人の口癖は「~しかない」。常に物事を限定してしまいがちです。逆に私の口癖は「ま、どっちでもいいか」。この気持ちが根底にあると心が少しゆるやかになります。こだわりが強すぎると疲れてしまうのです。

心が強いことをよく「鋼のメンタル」といいます。強そうなイメージですが硬い分、折れやすいのも事実です。おすすめは「柳のメンタル」。風になびいて流されていくイメージです。何ごとにも「ですよね~」とやり合わない気持ちです。孫子の兵法「戦わずして勝つ」。右から左へ受け流すことで戦うことなくその場を収めていくのです。打たれ強くて折れない、そしてしなやかに立ち直る「柳のメンタル」を目指しましょう。

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