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2022年6月12日放送 川村妙慶さん(第2284回)

会場 テレビ静岡(静岡市)
講師 僧侶・アナウンサー 川村妙慶
講師紹介

福岡県生まれ。真宗大谷派僧侶。
関西を中心にラジオ番組のパーソナリティーなどをつとめる。
ホームページで日替わり法話を毎日更新し、
メールでの悩み相談にも応じている。

第2284回「思いがけない出遇い」

人生は思い通りになりません。人生には三つの坂があるといわれています。上り坂、下り坂、そして「まさか」です。そして人には二面性があります。自分の立場をわきまえた表向きの顔、そして内面にある本当の自分。思いがけない出来事によって本当の自分に出遇うことがあります。

人が思いがけない行動をとるのは3つのケースといわれています。「誰もいなくなった時」「突然の出来事に遭遇した時」、そして「怒った時」です。突然怒られた時、その人の普段考えていたことがわかり、ショックを受けたことがあると思います。しかし、これは悪いことではありません。むしろ本当の自分に向き合うチャンスかもしれません。


河内音頭の歌手に杉さんという人がいます。大阪の民謡、河内音頭はお盆の時期に亡き人を偲んで歌い踊ります。実は杉さんはあまり歌が上手くありません。ところが杉さんが歌うと人が集まって来ます。そしてみんな涙を流すのです。その理由を師匠に尋ねると「あの人は技術で歌っているのではない。人情で歌っているからや...」と言いました。杉さんが歌に込めた想い、それは「親心」でした。

杉さんの父親は、幼い杉さんを残して戦地に向かったそうです。杉さんは歌を通してその事実を知り、父親の想いも知りました。この思いがけない出遇いが杉さんを、そして歌を聞く人たちの心を動かしていたのです。親心は仏心ともいわれます。強い想いに心が揺さぶられ、共鳴し合って感動が広がっていたのです。


私は僧侶として生きる予定はありませんでした。お寺の娘として生まれましたが、思いがけない出遇いが縁で仏の道に入りました。30代半ばになった時のことです、友人の僧侶から「法話をしてくれないか」と頼まれました。最初、私はこの依頼を断りました。すると友人は「妙慶さん、恥をかいたらいい」と言うのです。

「一方的に教えるという姿勢ではなく、わからないことは素直に認めて、お互いに学び合い、そして育ち合えばいい」という意味でした。まさしくこれが「共育(きょういく)」です。一般的な「教育」で教えることも大切です。しかし自分がひとつ高いところから教えるのではなく、共に育っていくことの大切さも教わりました。「恥をかく」こともある意味背中を押してもらうきっかけになります。これも思いがけない出遇いです。

思いがけない出遇いには、うれしい出遇い、苦しい出遇い、様々な出遇いがあります。そのひとつひとつに意味があります。それが生きる意味になります。みなさん、苦労を味わいませんか?味わう心を持ちませんか?それが生きる意味なのです。

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