2022年9月25日放送 大棟耕介さん(第2299回)
会場 | 焼津文化会館(焼津市) |
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講師 | ホスピタルクラウン 大棟耕介 |
講師紹介 | 1969年生まれ、愛知県出身。筑波大学卒業。 |
会場 | 焼津文化会館(焼津市) |
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講師 | ホスピタルクラウン 大棟耕介 |
講師紹介 | 1969年生まれ、愛知県出身。筑波大学卒業。 |
ここ数年、コロナ禍で人とのコミュニケーションが少なくなってしまいました。それと同時に、SNSを活用すれば非対面でもコミュニケーションがとれると誰もが思っています。これは怖いことです。きょうは道化師として30年以上活動してきたなかで私が学んだ『クラウン流コミュニケーション』についてお伝えします。
まず大切なのは「見る」こと、相手をよく観察することです。私は幼い頃から人目を気にしてきました。自分自身ではプラスに捉えていなかったのですが、クラウンになった時とても力になりました。人目を気にすることは、周りの人たちに注意を向けることでもあります。
次に「見られる」という意識を持つことです。私たちは出かけるときに服を選びます。それは誰かに見られているという意識が常にあるからです。この意識を忘れないでください。
そして「見せる」こと。これは役柄を演じるということです。人には様々な役柄があります。会社では上司や部下、家庭では父や母。父と夫でも少し関係が異なります。役柄は常に変化するのです。その異なる役柄のすべてでコミュニケーション上手な人になれる訳ではありません。だからこそ「その役柄を演じている」と思うことで気持ちが楽になることもあります。
また「合わせる」ことも大切です。コミュニケーションは一方通行ではありません。相手の呼吸やテンションに合わせて話しやすい状況をつくります。
最後に「大袈裟」。リアクションをオーバーにして相手に伝えることが大事です。感情表現が豊かな人には大勢の人が集まります。
私は病院でパフォーマンスをする時、まず付き添いのお母さんに演技を見てもらいます。お母さんが笑顔になると子どもが笑顔になります。病室に行く前にはナースセンターでも演技をします。看護師さんが笑顔になると病院全体が笑顔になります。笑顔に人が集まります。人との距離を縮めてくれます。そして笑顔は広がっていきます。
クラウンは脇役といっても「名脇役」です。あえて自分が一歩引くことで相手を主役にすることができます。押してばかりでは相手が引いてしまいます。古事記に登場する「天岩戸神話」どんな力を使っても岩戸は開けられませんでした。ところがお祭りを開いて歌ったり、踊ったり、楽しく振舞うと天照大神は自ら岩戸を開けました。押すばかりでなく一歩引くこと、そして笑顔に人は惹きつけられます。
お父さんやお母さん、そして先生...どんな役柄も大変です。しかし大切な役柄です。だからこそぼちぼち、コツコツ、淡々とその役柄を演じ続けてほしいと思います。演じていると思うと少し気持ちが楽になります。そして笑顔が広がれば、家庭や地域がこれまで以上に楽しく素敵な場所になると思います。