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過去の放送

2022年10月23日放送 相田一人さん(第2303回)

会場 浅羽東コミュニティセンター(袋井市)
講師 相田みつを美術館館長 相田一人
講師紹介

1955年栃木県生まれ。相田みつをの長男。1996年から相田みつを美術館の館長を務める。全国各地での講演活動や執筆活動などを行う。2024年、相田みつを生誕100年を迎えた。

第2303回「うつくしいものを」

【うつくしいものを美しいと思える あなたのこころがうつくしい】

父・相田みつをの作品です。父は美しい絵や風景、音楽を見たり聞いたりしたときに、心の底から"うつくしい"と感動すること、それが"うつくしいこころ"だと話していました。これを裏返してみると悪いこと、まちがっていることを見たり聞いたりしたときに「これは、おかしい」と気づくことです。父は具体的に3つの例を挙げていました。戦争と犯罪、そしていじめです。
また親が子どものためにできることの中で一番大切なのは"うつくしいと思えるこころ"を養うことだと繰り返し話していました。そのためにはどうすればいいのでしょうか?父の答えは明快でした。まず親自身が感動すること。その感動は必ず子どもの心に響きます。そして心の中に種のように残って、子どもの成長とともに"感動する心"が育っていく。それが父の持論でした。

【感動とは感じて動くと書くんだなあ】

父・相田みつをは、栃木県足利市で生まれ、生涯を過ごしました。絵画がとても好きで東京の銀座や上野にある画廊によく足を運んでいました。気に入った絵があると長い時間見入っていたそうです。家に帰るとまず母にその感動を伝えました。すると私たち子どもにもその絵を見せたくなるのです。そんな時、よく先生に手紙を持たされました。手紙には「学校の勉強も大切ですが、それ以上に幼いうちから芸術作品に触れさせることが情操教育には欠かせません。だから学校を休ませてほしい」と父の想いが綴られていて、私は学校を休んで画廊に出かけました。


足利市は街の真ん中に渡良瀬川という大きな川が流れています。我が家は渡良瀬川の近くでした。父は気分転換によく私と妹を誘って釣りに出かけました。親子三人で釣り糸を垂れていると父がいろいろな話をしてくれました。自分が小さい頃、ふたりの兄とよく釣りをしたこと。その時「空が見えないくらい」たくさんのトンボが飛んでいたこと。そんな他愛のない話が心に残っています。
釣りを終えると親子三人で土手を歩いて帰りました。手をつないで歩きながら父が童謡を歌ってくれました。そして真っ赤に染まった空を見上げて立ち止まると父は突然、私と妹の名前を呼んで「なんてきれいな夕焼けだろう!」と大きな声を出しました。つないだ手から父の感動が伝わってきました。父は幼い私や妹にうつくしいものを美しいと思う心を伝えたかったのだと思います。その頃の情景を思い起こさせる作品があります。

【そらもゆうやけ みずもゆうやけ
  かえりゆく つばめもわたしも ゆうやけのなか】


いまの世の中は、感染症の不安や争いごとが絶えず、殺伐としています。
だからこそ「うつくしいものを美しいと思えるこころ」を大切にしたいと思います。

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