2014年8月30日放送 岡崎好秀さん(第1902回)
会場 | さくら台幼稚園(富士市) |
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講師 | 小児歯科医 岡崎好秀 |
講師紹介 | 1952年大阪府生まれ。 |
会場 | さくら台幼稚園(富士市) |
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講師 | 小児歯科医 岡崎好秀 |
講師紹介 | 1952年大阪府生まれ。 |
大学を卒業して37年経ちました。
そのころ撮った1枚の写真を見てください。
(子どもの口の中の写真・すべてが虫歯で真っ黒)
もう1枚はこちらです。
(同じく子どもの口の中、
白い歯が並んでいるが乳歯の総入れ歯)
日本の高度経済成長の時代、虫歯が多く、
虫歯予防に対する知識もありませんでした。
乳歯は生えかわるので虫歯になっても大丈夫、
命にかかわるものでないと思われていました。
私が大学卒業して1年後、
ある小児病院から小学1年生の子が救急車で運ばれてきました。
どうしたのかと見ると、
その子は白血病で抗がん剤も入っているとのこと。
抵抗力がなく、病院から外には出せない状態なのに、
どうしても歯が痛いというので連れてこられたのです。
この年齢では第一大臼歯という大きな歯が最初に生えます
。その歯に穴があいていました。
普通なら、麻酔をして神経を取るような治療です。
しかし、その子に麻酔をしてよいのかどうかわかりません。
私は自分の先生のところに聞きに行くと、
その先生は少しだけ悪いところを取って
あとはセメントをかぶせておけばいいと言いましたので、
その通りにしました。
でも、あとから考えてみると、
その子はきっと痛みの中で
亡くなって行ったに違いないと思いました。
私は歯科医で病気は治せないけれど、
歯だけは治せると思ってきたのに、
実際はそうではなかった。
どんな歯でも治せるなどと
思いあがっていたことに気付きました。
その経験から、今の自分があります。
20年前、障害のある4歳の子どもの患者がいました。
歩けず、お座りも出来ませんでした。
気管も切開していて歯は虫歯だらけでしたが、
治療を施して半年後に来院した時、顔が丸くなっていました。
お母さんに聞くと、お粥しか食べなかった子が、
肉や野菜をバリバリと食べるようになったと言うのです。
さらに半年後、見ると立てるようになり、
もう半年経つと、病院で歩いている姿を見ました。
口から物を入れること、
かむことの大切さを改めて知ることになりました。