2015年4月26日放送 小菅正夫さん(第1934回)
会場 | 清水高部小学校(静岡市) |
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講師 | 札幌市円山動物園参与 小菅正夫 |
講師紹介 | 1948年北海道生まれ。 |
会場 | 清水高部小学校(静岡市) |
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講師 | 札幌市円山動物園参与 小菅正夫 |
講師紹介 | 1948年北海道生まれ。 |
40年前動物園に入ったとき、
園では寒さに強い動物を飼おうということで、
ホッキョクグマやアムールトラなどを飼っていました。
南極の代表としてはペンギンを入れようと思ったらしく、
フンボルトペンギンがいました。
しかし、フンボルトペンギンは寒さに弱いペンギンです。
さらに壁に氷山の絵が描いてありました。
そんなところにフンボルトペンギンはいません。
冬はどうするのかと聞いたら、別の温かい場所で越冬させるとのこと。
でもペンギンたちはそんな生活に耐えられず、
肺病などにかかって死んでしまいました。
私は園長に掛け合って、別の動物にすべきだと訴えました。
では、何を飼えばいいのだと園長は聞きました。
私は、陸地と池があるペンギンの飼育場に入れることを考えて、
世界で一番大きいネズミ、カピバラがいいと答えました。
カピバラはペンギンのピンチヒッターだったのです。
カピバラがやってくると、
ぼーっとた顔が全国でファンクラブができるほど有名になり
カピバラブームになりました。
最初に来たとき、大きいなと思いましたが、
それでも体重はまだ25キロぐらいでした。
ある日、元ペンギンの池の柵をぴょーんと垂直とびで飛び超えて
外に逃げ出してしまい、あわてて追いかけて捕まえました。
体重が軽いせいだと、すぐにえさを増やして太らせてからはなくなりました。
そのカピバラがする子育ては、今流行りの「イクメン」です。
旭山動物園では3匹の子どもが生まれましたが、
メスは子どもを生むとすぐにどこかへ行ってしまい、
子どもたちはお父さんの所に走っていきました。
お父さんは体を丁寧になめて寄り添い、見守ります。
おっぱいが飲みたくなったら母さんのところに行きますが、
それが済むとまた、お父さんの所に戻ります。
カピバラは1週間くらいおっぱいを飲むと、もう自分で草を食べ始めます。
カピバラの飼育係が飼育場の中に入ると、
メスはすぐに池に飛び込んで逃げてしまいますが、
オスは唸り声をあげて飼育係の前に立ちはだかります。
その間に子供たちは池に逃げこみます。
カピバラは、1匹のオスと数匹のメス、子どもの群れで生活をします。
オスが子育てをする理由は、
2キロある子どもが成長するのに1年もかかるため、
メスが生涯に産む子どもの数が限られていて、
子育ての間にメスがほかの動物に襲われたりすれば、
子供を産めなくなってしまうからです。オスは代わりがいくらでもいます。
これが何万年もの長い間培ってきたカピバラの生き残り戦略です。
核家族化し、女性が社会に進出するようになった今の人間社会にも、
カピバラのような子育てが求められているのかもしれません。