2016年1月10日放送 川村妙慶さん(第1967回)
会場 | 常葉学園(静岡市) |
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講師 | 僧侶・アナウンサー 川村妙慶 |
講師紹介 | 福岡県生まれ。真宗大谷派僧侶。 |
会場 | 常葉学園(静岡市) |
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講師 | 僧侶・アナウンサー 川村妙慶 |
講師紹介 | 福岡県生まれ。真宗大谷派僧侶。 |
私のところには1日に200通ほどの悩みメールが届きます。
その中の1つに、「私の夫は今まで一生懸命仕事をしてきました。
退職後は私とともに第2の人生を歩もうとしていましたが、
その半年後に独り言を言うようになりました。
『昔は何でもできたのに、もう役立たずになってしまった。
これから何を望みに生きて行けばいいのか』と。
こんな夫をどう励ましたらいいのでしょう」と言う内容のものがありました。
皆さんの中にもこんな思いを抱いている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
インドには、『人生には4つの時期がある』という思想があります。
1番目は、学生期(がくしょうき)です。
柔らかい草木が風が吹くとなびくように、学ぶのに一番柔軟な時です。
これは20歳までと言われます。
2番目は、家住期(かじゅうき)といい、勉強したことを生かして家のために働いたり、
親に恩返しをしたりする時期です。これは50歳までと言われます。
3番目は、林住期(りんじゅうき)です。
それまでは自己を犠牲にして誰かのために働いてきたが、
これからは自分の人生とは何かと、林の中でじっくりと考える時期です。
これは70歳までと言われます。
そして4番目は遊行期(ゆぎょうき)です。
遊ぶという文字が入っていますが、快楽だけを求めるのではなく、
心に余裕を持ちましょうという時期です。
今まで許せなかったことも許し、諦めきれなかったことも
「これも人生だ」と、手放すことです。
4つのうち、家住期までは上り坂ですが、上り詰めると足元がぐらついてきます。
「有頂天」という言葉がある通り、上り詰めると余裕がなくなります。
ここでお伝えしたいのは下りも大切ですよということです。
メールの男性は、昔、上りを経験したときだけがいい人生だと思っているようですが、
下りで足元を見れば、これまで踏みつけていた大地が、
自分をしっかりと受け止めてくれていたのだと気づきます。
これを、「浄土をいただく」と言います。そこには「争」という字が入っています。
今まで人をかき分けるようにして幸せを求めて来たものから、その「争」を水に流す。
そして大地をいただきながら歩いていきましょうという意味なのです。