2019年4月 7日放送 平野啓一郎さん(第2124回)
会場 | 大井川公民館(焼津市) |
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講師 | 小説家 平野啓一郎 |
講師紹介 | 1975年生まれ。北九州市出身。 |
会場 | 大井川公民館(焼津市) |
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講師 | 小説家 平野啓一郎 |
講師紹介 | 1975年生まれ。北九州市出身。 |
「アイデンティティ」というのは難しい言葉です。
簡単に言うと「自分とは何なのか?」という意味だと思います。
これは皆さんが青春時代から折に触れて感じることであり、
人生の最後に振り返ってみた時
「結局、自分って何だったのだろう。」と考える人も多いでしょう。
文学においても「アイデンティティ」は永遠のテーマの一つだと思います。
昨今、世界的に「対立」と「分断」という事が社会の嘆かわしい問題として語られています。
政治一つをとっても、与党支持なのか、野党支持なのか、といった対立があります。
宗教同士の対立や、人種差別、民族問題もあるでしょう。
身近な例で言うと日本人だからというだけで差別したりされたりという事もあります。
このような「対立」や「分断」というのは一人一人のアイデンティティとは関係なく、
その人が属しているカテゴリー、つまりグループ同士の対立のことを意味するのです。
私たちは、いつも一人の人間でありながら
グループの中の人間として見たり、見られたりする事がしばしば起こります。
自分自身とは何なのか考える時、「自分はあまり個性的ではない」と考える人は多いと思います。
しかし私から見れば、皆さんは一人一人、個性的だと思います。
今、隣にいる人をそっくりそのまま真似してみて下さい。
それは大変難しい事ではないですか?
私たちは一人一人、真似しきれないほどの個性を持って生きています。
ところが、個性を持っているにも関わらず、
「自分とは何なのか?他人とは何なのか?」という事を考える時、
例えば年齢で言うと、あの人は若いとか年寄りだからだとか、
どうしてもグループとして一括りに考えてしまいがちになります。
なぜそうなるのでしょうか?
今日は、このように身の回りでよく起こる事柄から
差別とアイデンティティについて考えてみたいと思います。