2021年10月 3日放送 山田ルイ53世さん(第2250回)
会場 | 浅羽東コミュニティセンター(袋井市) |
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講師 | タレント 山田ルイ53世 |
講師紹介 | 兵庫県出身。お笑いコンビ 髭男爵のツッコミ担当。 |
会場 | 浅羽東コミュニティセンター(袋井市) |
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講師 | タレント 山田ルイ53世 |
講師紹介 | 兵庫県出身。お笑いコンビ 髭男爵のツッコミ担当。 |
僕はお笑い芸人の髭男爵であることを娘に隠しています。
「娘に話せばいいのに...。」という人もいると思います。
実際に話している一発屋芸人パパもたくさんいます。
なぜ言えないのかというと僕が心配性だからです。
自分の人生を振り返った時に「結構しんどかった。」という思いがあります。
中学受験を突破して進学校に入ったものの、
中2の夏に不登校になってそのまま6年間ひきこもりました。
なんとか大検(高卒認定)をとって大学に入ったけれども馴染めずに夜逃げ同然に上京。
芸人を目指して何年も下積みがあって、
やっとご飯が食べられるようになったら「一発屋」と呼ばれる始末。
人生のすごろくには嫌なマス目もたくさんありました。
娘が同じにならないように...いつもどこかで心配しています。
だからこそ、こだわってしまう点がいくつかあります。
ひとつは毎朝、出かける前に「ちゃんとウンチした?」と聞いてしまうこと。
これは僕が不登校になった原因に、登校途中「大の方」を粗相してしまったことがあるからです。
幼稚園の頃は娘も無邪気に対応してくれましたが
小学2年の半ばを過ぎた頃から煩わしく思われています。
もうひとつは学校から帰ってきた娘にいろいろ質問してしまうこと。
「大丈夫だった? 学校楽しかった?」
「お友だちと遊んだ?何して遊んだ?」もう取り調べ状態です。
自業自得ですが僕は人づきあいに疎くて、芸能界では珍しく社交性はゼロ。
だからこそ娘には和気あいあいと友だち付き合いをして欲しいと思うがあまり、
ついつい取り調べをしてしまいます。
これだけ悩みの多い僕が新聞で「お悩み相談コーナー」を担当しています。
その中で思うことがあります。
大人は子どもに対して「君たちの可能性は無限だ...。」みたいなことを言います。
しかし無限の可能性の中から
最初の一手で正解を引き当てることができる人がどれほどいるでしょう?
いろいろトライしてあれもダメ、これもダメ...。
その中で残ったものが「自分のできること」くらいの感覚でいいと思います。
失敗の経験値を蓄積しておくことが大切です。
子どもたちが安心、安全に失敗できるのは親元にいるときだけ。
カーナビのように先手先手で先回りするより、
失敗したとき安全に受け止めてあげられるエアバッグのような存在でありたいと思います。
そう言いながら、僕が娘に友だちのことを根ほり葉ほり聞いたり、
「一発屋」芸人であることを隠していたりすることも実は大いなる先回りです。
世の中にあふれている素敵な子育ては「モデルルーム」みたいなものです。
住んでみたいと思いますが、それがなぜかというとそこに人が住んでいないからです。
素敵な子育て像みたいなものに若いパパ、ママが振り回されて、
ハードルを上げられてしまうのはつらいことです。
「子育てって本当にしんどい...。」と、友だちや夫婦の間で愚痴が言える、
ため息がつけるくらいでいいと思います。
「ため息は心の換気。」
大いにため息をつきながら子育てを楽しんで欲しいと思います。