2023年1月 8日放送 藤原和博さん(第2313回)
会場 | 聖隷クリストファー中・高等学校(浜松市) |
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講師 | 教育改革実践家 藤原和博 |
講師紹介 | 1955年生まれ。 |
番組で紹介した本 | 「『人生の教科書』コレクション 全10冊セット」 著:藤原和博(筑摩書房) |
会場 | 聖隷クリストファー中・高等学校(浜松市) |
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講師 | 教育改革実践家 藤原和博 |
講師紹介 | 1955年生まれ。 |
番組で紹介した本 | 「『人生の教科書』コレクション 全10冊セット」 著:藤原和博(筑摩書房) |
2020年代はコロナ禍で大変でしたが、仮にコロナがなかったとしても「生きづらい世の中」と言えます。なぜ生きづらいのでしょうか?それは過渡期だからです。日本は戦後、高度経済成長を続けてきました。経済成長は1997年頃にピークアウトして1998年からは「成熟社会」に入りました。同時にデジタル化も始まりました。1998年はアメリカでグーグルが誕生した年でもあります。
成長社会は「みんな一緒」という感覚が強い時代でした。みんな同じだと安心感があります。一方、いまの成熟社会は「それぞれ一人一人」、個性を重んじて自由度が増しています。その反面、不安もあると思います。例えば、ランドセル。成長社会では、男子は黒、女子は赤。みんな同じでした。ところが現在は、パープルが人気だったり、茶色や紺色があったり人それぞれです。電話もそうです。かつては黒電話が一家に一台。家族みんなで固定電話を使っていました。それが携帯電話になり、スマートフォンに変わっています。
みんな一緒の成長社会は、例えば「大きいことはいいことだ」「安いのはいいことだ」など『良いこと』が決まっていました。つまり正解がある時代です。学校教育でも正解をたくさん覚えて、早く的確に答えを導き出す力(情報処理力)を鍛えてきました。私は情報処理力を「ジグソーパズル型」学力と呼んでいます。ジグソーパズルは決まった正解があります。それをピースに分解して元に戻そうという正解主義型のゲームです。戦後、日本の学校教育は「ジグソーパズルが得意な子どもたちをいかに多く育てるか」というところに力を入れていました。
それぞれ一人一人、正解がない現在はどうでしょうか?自ら考え、他の人の意見も聞きながら納得できる答えを導き出して、それを実践していく。クリエイティブな考え方とともに、それを常に修正しながら追求していく姿勢が必要です。この頭の柔らかさが「情報編集力」です。私は「レゴ型」学力と呼んでいます。レゴのブロックは、想像力が豊かであれば宇宙船もできるし、家を作ることもできます。さらに街を作り出すこともできます。
これから先の正解がない社会、それぞれ一人一人の世の中を生きていくために必要なのは「情報編集力」です。自分で仮説を作ってより多くの人の知識や経験を取り入れながら、みんなが納得できる「答え」を導き出す力です。
情報編集力を鍛えるのは「遊び」です。遊びの中には常に想定外のことが出てきます。
子どもの頃、外で遊んでいると急な雨が...。そんなときは遊びの内容を変更したり、遊べる場所を探したりしたはずです。豊かな遊びの積み重ねが情報編集力の基盤になります。そして学校などの学びの場では、好きなテーマを決めて深く掘り下げる「探求」を続けていくことが大事です。