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過去の放送

2023年3月12日放送 原坂一郎さん(第2322回)

会場 西町幼稚園(焼津市)
講師 こどもコンサルタント 原坂一郎
講師紹介

神戸市生まれ。23年間の保育士勤務を経て、
2004年「こどもコンサルタント」として独立。
笑いと笑顔をキーワードに、子育てに関する講演を
全国で展開。日本笑い学会の理事も務める。

番組で紹介した本 「読むだけで子育てがうんと楽しくなる本」 著:原坂一郎(春陽堂書店)

第2322回「心に残る10秒の思い出」

みなさんは、子どもの頃の親との思い出で楽しかったことは何ですか?ある講演会の事前アンケートで調べました。すると「夕焼けの中、お母さんと手をつないで歩いたこと」「お父さんが肩車をしてくれたこと」など、印象に残っているのはどれも何気ないエピソードばかりでした。子どもは親がお金をかけてくれたり、時間をかけてくれたりしたものを案外忘れてしまっています。その反面、小さな出来事を覚えているのです。それは自分が笑顔になれた記憶です。

最近の子育て世代は、忙しくて子どもとふれあう時間が少なくなったと言われます。でも大丈夫です。10秒レベルで構いません。子どもが笑顔になるようなふれあいをたくさんしてあげてください。難しいことではないと思います。

例えばキッチンで、使い終わったラップの芯を望遠鏡に見立てて「ごっご遊び」をします。すると大きくなってからもラップの芯を見るたびにお母さんと遊んだことを思い出すでしょう。お父さんは子どもが寝る前に抱っこしたり、おんぶしたりスキンシップを図ってみてください。例えそれが短い時間だったとしても、子どもの心にしっかり残ります。

子どもは飽きっぽいと思われがちですが、実は「満足する」のが早いのです。例えば動物園に行ったとき、ライオンを見たらすぐに次のエリアに移動してしまいませんか?展望台に登っても景色を見るのは10秒程度、その後はお土産売り場に夢中ですよね。子どもにとって「時間」は、1分でも10秒でもそれほど変わりません。ただし10秒と0秒では大違いです。

子どもはよく「見て見て」と言います。どんなに忙しい時でも「あとでね」と言わずにチラッと見て「本当だ、よくできたね」と声をかけてください。たった数秒のコミュニケーションでも、とても大切なことです。子どもたちが些細なエピソードを忘れずに覚えているのは、愛情がたっぷり感じられたから。その10秒は自分が愛された証だからなのです。

童謡「かあさんの歌」。戦時中に疎開していた作者が、母の優しさや故郷への想いを歌にしたものです。歌に出てくるお母さんは夜遅くまでかかって手袋を編んでくれます。現代のお母さんは手袋を編まないかもしれませんが、運動会の前日には夜遅くまでかかってもゼッケンを縫い付けてくれるでしょう。「ふるさとの便り」は手紙から宅配便に変わり囲炉裏の匂いはしませんが、子どもへの愛情は今も昔も変わりません。子どもの心に残る思い出は、愛情があふれた何気ない小さなかかわりの中にあるのです。

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