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過去の放送

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過去の放送

2023年4月 9日放送 川村妙慶さん(第2326回)

会場 テレビ静岡(静岡市)
講師 僧侶・アナウンサー 川村妙慶
講師紹介

福岡県生まれ。真宗大谷派僧侶。
関西を中心にラジオ番組のパーソナリティーなどをつとめる。
ホームページで日替わり法話を毎日更新し、
メールでの悩み相談にも応じている。

第2326回「いのちの声に呼応する」

ホームページで日替わり法話を始めて20年以上が経ちました。たくさんの相談が寄せられるなか、最も多いのが人間関係の悩みです。

人には三通りの生き方があるといわれます。まず一つは「動物的に生きる」、自分の感情のままに行動する生き方です。自分自身を振り返ることができません。二つ目は「道徳、倫理を持って生きる」という生き方。社会の中で暮らしていくために必要なことです。ただ、常に良いことだけを続けられるでしょうか?良いことをしたつもりが相手にとって迷惑になってしまうこともあります。食事をする時に命をいただくように、私たちは迷惑をかけずに生きられません。完璧な人はいないのです。三つ目は「教えを持って生きる」という生き方です。陽のあたる所は見えています。しかし、それ以外に陰で支えてくれているものがたくさんあります。「おかげさま」とは、「自分では見えないことに気付かせてもらった」という仏様の教えです。また「恩」を知ることも大切です。「因」という字は布団の上に人が寝ている姿を表しています。それを支えてもらっていると感じる「心」を持つことが「恩」です。自分自身を振り返って感謝の心を持つことが教えを持った生き方です。

「学文(がくぶん)」と「学問」の違いをご存じでしょうか?学文は「文字を学ぶ」ことです。たくさんの文字や知識を覚えることは仕事や生活に役立ちます。しかし、それだけでは人生に深みが出ません。学問は「問いを学ぶ」こと。自分が知った物事に対して「なぜ?」「どうして?」と常に問いかけながら幅を広げていくことが学問です。また心を添えて人に接していくのが学問です。

ある時、森林カメラマンにインタビューをする機会がありました。その人は、森に入ってまずそこに満ちた自然の声に耳を傾けるそうです。カメラのシャッターを切るのはそれからです。森の中に人が作り出した「美」はありません。自然から恵みを受けているからこそ、素晴らしい美が表現できるのです。

「人身(にんじん)受け難し いますでに受く」

いまここにいること、命の尊さを受け止めるという意味です。「ありがたい」という感謝の言葉もここから来ています。仏教の言葉では「受用(じゅよう)」といいます。私たちは命も縁も自らつくり出すことはできません。そのことをまず「受け止めて」生きてみませんか? まず、相手の声を聞いてそれと同じ言葉を返してみましょう。「やまびこ」と一緒です。同じ言葉を返してもらった時、人は安心します。そして相手のこころの奥底にある本当の声を聞きましょう。「やまびこ」のように柔らかい言葉を返すことができる人になりたいものです。

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