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2024年3月31日放送 田中ウルヴェ京さん(第2377回)

会場 テレビ静岡(静岡市)
講師 スポーツ心理学者・博士 田中ウルヴェ京
講師紹介

ソウル五輪シンクロ・デュエット銅メダリスト。米国大学院修士修了(スポーツ心理学)。慶應大学にて博士号取得(システムデザイン・マネジメント学)。慶應義塾大学特任准教授。トップアスリートや経営者など幅広く心理コンサルティングに携わる。一男一女の母。

第2377回「スポーツから学べる 心のスキル」

スポーツからは心・技・体いろいろなことを学べますが、その学んだことが引退後も企業や社会で役立ち、求められるスキルなのはなぜかということが盛んに研究されています。近年、イギリスの学生スポーツをやっていた約2万人を対象に量的調査をした結果、スポーツで学び仕事でも使える「心のスキル」がいくつか挙げられています。

そのうちのひとつが、「難しい目標でも達成しようとする意欲」です。達成しようとするためには「コンフォートゾーン(快適な空間)から出る能力」が必要です。身近な例えでは、トレーニングでいつも30回やる腹筋を、そこからさらに35回までやろうとした時。30回まではコンフォートゾーンですが「最後の5回はそこから出る」と決める力です。

こういった「心のスキル」はスポーツをすれば簡単に身につくわけではなく、体を作ったり技を学んだりするのに時間がかかるのと一緒で、一つ一つゆっくり身につけていくことだと思います。

人によってやり方は違いますが、具体例として、「難しい目標でも達成しようとする」ために実際に私自身がやったことを紹介します。

まず、必ず唱えていたのは、『自信は持たないようにする』です。達成できそうな目標なら自分を信じられプロセスもイメージができますが、難しい目標に向かう時、自信はないです。私はオリンピック選手になり選手村に入った時ですら、「自信なんて持たなくていい」と思うようにしていました。それはなぜか?『本番前日までネガティブな自分でいつづける』ことを大切にしていたからです。私の性分かもしれませんが、「もう大丈夫」「この自分でいけるかも」と思ってしまうと、コンフォートゾーンにも入りかねません。すると、うっかりミスが増え、怪我をします。自信を持ちすぎると正しい緊張ができなくなってしまうので、前日までは「最悪を常に想定する」という意味でのネガティブでいるようにしました。

そして迎えた本番当日、難しい目標でも達成するために何をしたか。『自分に期待しない』です。完璧にやろうと思うと過緊張をします。自分に期待をすると頑張り過ぎてしまいます。選手時代に日記によく書いていて、今でも大切にしているのが「本番は7割しか出せない」という言葉です。7割で良いと言っているのではなく、7割ですら、まあまあな自分でいるためには、緻密に戦略を練り、準備することが必要というのが私の具体例です。

最後に、学んだことを使っていく時に必要なこととして、『スポーツ以外の社会のことも知ろうとする能力』を付け加えたいと思います。いろいろな社会の人と話をしてコミュニケーションを取ることで、「自分がスポーツで学んだことはこの分野でも使えるのか」「もしかするとこの分野には使えないのかもしれない」などと気づき生かすことができます。

ぜひいろいろなご自身の経験を当てはめてみて、社会の中で生かしていってください。

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