2012年4月14日放送 堀田力さん(第1783回)
会場 | 菊川文化会館アエル(菊川市) |
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講師 | さわやか福祉財団 堀田力 |
講師紹介 | 1934年京都府生まれ。 |
会場 | 菊川文化会館アエル(菊川市) |
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講師 | さわやか福祉財団 堀田力 |
講師紹介 | 1934年京都府生まれ。 |
「ふれあい」。
当たり前のようですが、これが最近なくなってきました。
人が冷たくなり、東京で暮らしていると近所と話もしないのです。
町を歩いてもそうです。
先日ある本屋さんで、リュックを背負った女性が、
地下鉄の駅はどこかと店の若い女性に尋ねたら、その女性は一言だけ、「あっち」。
私が「あっちじゃわからないよなあ」とつぶやくと、
その女性は「ここは道を教える場所ではないから」と言い、
その店の主人と思われる中年の女性も、たしなめるのではなく、
「そうね、今度はそう張り紙しておこうか」と言いました。
私はそれ以来、その本屋に行くのをやめました。
私も検事だった若いころは、ふれあいや助け合いなど考えてもみませんでした。
30歳代の後半になって、外務省に出向し、アメリカに外交官として渡りました。
妻と小さい子ども二人を連れて行くので、狩猟民族と言われる国で、
子どもがいじめられるのではと不安でした。
しかし、ワシントンの郊外の一軒家を借りて住み始めたらすぐに、
子どもたちはすっかり近所の子と仲良くなり、
うちの子は日本語、あちらは英語でウルトラマンの真似などして遊んでいました。
そこには6軒の家があり、庭は垣根もなくすべて芝生でつながっていました。
子どもたちは行ったり来たり自由に走り回りました。
私は、外交官で金曜日はお客がたくさん来るので、車を置かせて欲しいと頼むと
「どこにでもおいて下さい。いちいち断らなくてもいいですよ」と言ってくれました。
子どもが病気をしたとき、困って夜遅くに電話しても、どの病院がいいか、
どこがダメかまで詳しく教えてくれました。
個人主義の国ですが、そうした絆があったのです。
日本でも京都の長屋にそんなものがあります。
裏の庭は共通で、子どもはどこの家にも入って行き、かわいがってもらいます。
お母さんは子どもがいないと思っても心配しません。買い物も断りなく行きます。
これは子どもの成長にもよく、人とうまく付き合う能力が自然に育ち、社会に出ても安心です。
たくさんの人に交わって、自分で学べる環境をつくることが、ふれあいの力となるのです。