2016年7月17日放送 きたやまおさむさん(第1993回)
会場 | 菊川文化センターアエル(菊川市) |
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講師 | 精神科医・作詞家 きたやまおさむ |
講師紹介 | 1946年淡路島生まれ。京都府立医科大学卒。 |
会場 | 菊川文化センターアエル(菊川市) |
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講師 | 精神科医・作詞家 きたやまおさむ |
講師紹介 | 1946年淡路島生まれ。京都府立医科大学卒。 |
人は生まれる前からお母さんに包まれて過ごしています。
お腹の中の胎児期には未消化物をお母さんが引き受け、
お母さんから酸素や栄養をもらいます。
しかしこの状態から突然お母さんを失います。
(生誕と同時に環境が変わります)
つまり生まれてくると、
子どものNEEDがすべて叶えられるわけではないということです。
おむつを替えてほしいとか、お腹がすいたとか、
子どもは欲求不満を、泣き叫ぶことによって訴えるしかありません。
胎児期にはうまくいっていた環境、いらないものは吐き出し、
必要なものを得ることが出来たその環境がなくなってしまうのです。
人間の子だけが、未熟なまま生まれてくると言われているのです。
馬と鹿でバカと言いますが、
あの動物たちは生まれて数時間で立ち上がって
自分で自分の食べ物を取りに行きます。
お母さんともちゃんと喋れているようにみえます。
人間の子は首が座っていませんし、言葉が話せません。
お母さんと同じ消化能力がなく、直立歩行も出来ません。
例外こそあれ、人間だけがとても未熟に生まれてくるのです。
お母さんが必要なのにいないのです。
その観点から見ると、もう2、3年お腹の中にいるほうがいいと思われます。
子宮外の胎児期と呼ばれていますが、
人間の子は生まれてすぐお母さんかそれに相当する人の献身的な育児が必要です。
つまり、誰かにお世話にならなければ生きていけません。
でなければ私もここにこうして立っていることは出来なかったのです。
つまり、保護された環境を得て初めて、
最初の2年間ほどの子宮外胎児期を送ることが出来、
あとの3年でようやく自分で服を着られるようになっていく。
だから、受けた育児によって皆違ってきます。
寝る子は育つと言いますが、
寝ていられるような環境を与えられて子は育つと言うわけです。
幸せにはdoingとbeingの2つがあります。
よくどんな時に幸せを感じるかと問われて、
何かをもらったとか、レースで勝ったとか、
doingのことばかりをおっしゃる人がいますが、よく考えてみてください。
何かをすることのみが評価され、
生きているだけではいけない社会になっているように思います。
大切なのは子どもに戻れる瞬間を取り戻すことです。
仕事で得たお金を使って(doing)何もしなくていい時間(being)を得ること。
価値観が逆転します。
これは心の健康のためにとてもいいことだと思います。