2016年8月21日放送 小菅正夫さん(第1996回)
会場 | 大井川公民館(焼津市) |
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講師 | 札幌市円山動物園参与 小菅正夫 |
講師紹介 | 1948年北海道生まれ。 |
会場 | 大井川公民館(焼津市) |
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講師 | 札幌市円山動物園参与 小菅正夫 |
講師紹介 | 1948年北海道生まれ。 |
アフリカのケニアやエチオピアに生息するハダカデバネズミは、
体の大きさが8センチ、体重は80グラムほどのネズミの仲間です。
目も耳も小さく、名前の通り体毛がほとんどなく、
俗にいう出っ歯で、しかもその歯は口を閉じていても外に出ている状態です。
こんな動物がいてもいいのかと思うくらい不思議な動物です。
そんなハダカデバネズミは半乾燥地帯の地面の下に、
トンネルを掘ってモグラのような暮らしをしています。
毛がほとんどないので、ダニやシラミがつきません。
さらに、トンネルの中は温度が一定で温度調節が必要ないので
毛もいらないと言うわけです。
しかし、少し残っている毛は重要で、トンネルの中を前にも後ろにも、
ものすごいスピードで走り回るときに役に立ちます。
仲間は互いの匂いで認識し合うため、排せつ物を体にこすりつけます。
耳はよく聞こえ、遠くで起きたことを感知出来ます。
研究者の報告では、17種類もの声を聞き分けていると言います。
トンネルの中で一緒に暮らす仲間の数は80匹から300匹、
餌をどうしているかと言うと、地上には出ず、
外に出ている歯で地面を掘りまくり、木の根っこなどを探し当てて食べるのです。
食糧事情は極めて悪いと言えます。
トンネルの長さは3キロにも達します。
その中には小さな部屋がいくつもあって、トイレも作り清潔に保ちます。
トンネルを掘って余った土は、小さな穴から地上に掻き出します。
それが小さな火山のようで、「ボルケーノ」と呼ばれています。
3キロのトンネルの中にはあまり空気が入りません。
でも、酸素濃度が7~8%でも走り回ることが出来る特殊な生き物です。
赤ちゃんが生まれると、生みの親、育ての親が共同で育てます。
80頭の中で子どもを産むのは1匹のメスだけです。
そしてそのメスと交尾するのは3匹のオスだけです。
女王が1匹、王様が3匹ということです。
そのほかのハダカデバネズミは何をしているかというと、
ひたすら穴を掘り続けて餌を探している「働きデバ」と、普段は仕事をせず、
外敵が襲来したときに戦う「兵隊デバ」などの役割があります。
こうした生態を見ると蟻や蜂の社会とよく似ています。
驚くことに、普通のネズミの寿命が2年ほどなのに対し、
ハダカデバネズミの寿命は平均28年、ある大学にいる女王デバは38歳だそうです。
ハダカデバネズミは、札幌の円山動物園、上野動物園、
埼玉のこども動物自然公園の3か所で見ることが出来ます。