2020年4月12日放送 竹下和男さん(第2174回)
会場 | 裾野市生涯学習センター(裾野市) |
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講師 | 子どもが作る“弁当の日”提唱者 竹下和男 |
講師紹介 | 1949香川県生まれ。香川大学教育学部卒業。 |
番組で紹介した本 | 『100年未来の家族へ』 ぼくらがつくる“弁当の日”5.7.5 著:竹下和男(自然食通信社) |
会場 | 裾野市生涯学習センター(裾野市) |
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講師 | 子どもが作る“弁当の日”提唱者 竹下和男 |
講師紹介 | 1949香川県生まれ。香川大学教育学部卒業。 |
番組で紹介した本 | 『100年未来の家族へ』 ぼくらがつくる“弁当の日”5.7.5 著:竹下和男(自然食通信社) |
私は5人きょうだいの末っ子で、とてもいい子でした。
ただ、貧しい家でした。特に食べ物。
親に「今晩何食べたい?」と聞かれたことはありません。
おそらく親も、子どもが食べたい物を準備できないと知っていたからだと思います。
実は、こうした食生活が人間の成長に大きな意味を持っていたことを今ならわかります。
でも当時はそうではありませんでした。
当時、親が親戚の法事に出かけることが、どれほど楽しみだったか。
2段重ねのお土産の弁当を持って帰ってきてくれるので、
きょうだい5人で楽しみに待っていました。
ところが不思議なことに、弁当はおかずが一品も減っていないのです。
全部残っています。
年に数回食べられるかどうかの豪勢なおかずが詰まっているのにです。
両親に「一緒に食べよう。」と言っても、
「お父さん、お母さんはお腹が空いていないから子どもたちみんなで食べなさい。」
と言ってくれました。
それを聞いた私は、大人になればお腹が空かなくなるものだと思っていました。
両親は子どもたちがお弁当を食べる様子をにこにこしながら見ていました。
その姿を見て「自分も大人になったらこうやって子どもたちに食べさせよう。
大人はお腹が空かないから大丈夫。」と思っていたのです。
しかし現実は違いました。
私の親は、子どもたちに食べさせるために自分が食べるのを我慢していたのです。
いま、こうした状況はあまり見られなくなりました。
それは豊かになったからです。
ある講演会で「死ぬ間際に何を食べたいですか?」というアンケートを行った時、
「お母さんが作った弁当を食べたい!」と答えた30代の男性がいました。
この男性は子どものころ親が働きに出ていて、
お母さんが作ってくれた弁当を一度も食べたことがなかったそうです。
子どもは、親の「気持ち」を欲しがります。
弁当箱の中には、弁当を作るために費やした時間や親の気持ちが詰まっていて、
子どもはそれをいただくのです。
子どもが作る"弁当の日"を始めて14年後、25歳になった生徒たちに再会した時、
「先生、毎日弁当を作っています。子育てが楽しいんです。」と言ってくれました。
この幸せがもっと広がって欲しいと思っています。